第7話

2018年、国際情勢、特に日ノ本の国際政治は目まぐるしい程に胎動した。

ロージア(ロージア連邦)のパッチン大統領が日ノ本の亜部総理に北方四島の内2島返還を打診して来た。

北方四島とは日ノ本の北の端にある4つの島々で、第二次大戦終了時にどさくさに紛れてロージア(ロージア連邦)の前身となるウラジミール連邦が奪った国土で、法的根拠もなく占領され領有権を奪われた島々の事である。

二次大戦終結後に日ノ本はロサンゼルス平和条約に署名を強要された際にこの4島の以外にも千島列島・南樺太の権利、権限及び請求権を放棄もさせられた。

4島は日ロ平和条約を締結する際に返還されると言うことになったが、日ロでそのような条約が結ばれることはないのかもしれない。

現在、日ロは戦争の小康状態にある位置付けであるらしい。

それにしても、パッチン大統領の思惑は透けて見える。

現在、ロージアは経済停滞、いや大不況で、国際的な制裁を受けている真っただ中で、その打開策として日ノ本のダンジョンを突破口に経済立て直しを図ろうと言う魂胆であろう。

返還の見返りにロージアと合弁でダンジョン内探索と更なる資源獲得の公社設立の打診である。

盗人猛々しいとはこの事であろうが、日ノ本にとって4島の奪還は悲願の一つである。

亜部総理含めこの申し出に日ノ本の政治家たちが頭を悩ませる結果となる。

日ノ本の現在の親分はAUSAである。

このAUSAとロージアは犬猿の仲で、最大の敵国認定をお互いの国がしている間柄だ。

そして、ダンジョンにはAUSAも大きな関心事を寄せており、現在、軍まで常駐している有様だ。

ここにロージアを参入させるなどキャンプファイヤーにウォッカの瓶ごと投げ込むような蛮行としか思えないが、日ノ本にとっては目の前の人参がとても美味しそうに見えるのかもしれない。

この年、AUSA大統領となったドランブー大統領は精力的に動いた。

中でも北新鮮のウン総書記との会談や|Trans-Pacific Partnership Project《TPPP》11からAUSA単独離脱、等々を行い、国内外を大きく混乱せしめた。

また、同じこの年に癇国である問題が火を噴いた。

所謂、徴用工問題と言う奴である。

戦後直ぐにダンジョン災害でダンジョン周辺が甚大な被害を受け、復興を目指した日ノ本は労働者として癇国人の期間労働者を募った。

戦時中は新鮮半島は日ノ本の統治下にあった為、馴染むのも早いだろうと安易に考えで一癖も二癖もあるであろうこの国家に労働者を募った。

当時、五つ星重工や日ノ本製鉄等がこの期間労働者を雇ったのであるが、現在、癇国国内ではこれは不当に狩り出され重労働を強いられたとして大法院(日ノ本の最高裁のような物)に訴えを起こしている。

戦後の話なのに何を言っているのか意味不明であるし、情報改ざんであることは解った上での蛮行である。

ここで日ノ本の官僚・政治家たちも事態のちゃんと把握が出来ていたか微妙な回答を行い、混乱し無駄に大問題化する。

日ノ本と癇国で1965年に結ばれた日癇請求権協定と言う協定があるが、日ノ本はこの協定により「解決済み」と回答しこの訴えを無視した。

問題はそこではない、そもそも終戦後の話だ。

対戦者不在のまま法廷ではこの訴え出た者たちが勝利し、五つ星重工や日ノ本製鉄等の日ノ本の企業の癇国内のにおける資産が凍結または差し押さえされることとなる。

五つ星重工や日ノ本製鉄等の日ノ本の企業の方には当時の給料支払い明細などが存在するし、ちゃんと戦えば・・・いや、あの国では道理が道理ではないので戦っても敗訴した公算は高い。

要は嘘の訴えが勝利し給料の二重取りと賠償責任を負わされた訳である。

事態を知った政府首脳陣は大激怒するが、ボンクラ官僚たちに事の顛末を任せた者たちにこそ責任があるのだが、政府側より静観するよう指示を受けた企業が大損する羽目になったのは痛恨の大打撃以外何であろうか。

これにより、日癇両国の政府間の溝は広がり、この時、癇国で大統領を勤めた反日主義者の者はどの様な感想を抱いただろうか。

癇国国内は反日の風が吹き荒れ、不買運動なるものが起こるが、自分たちで自分たちの首を締める格好となったが、自業自得過ぎて言葉も出ない。

その頃、そんな世の中などどこ吹く風と薙・奈美たちは小学校を卒業し、中等部へと最後の義務教育の階段を上った。

日ノ本国は銃刀法と言う法律があった。

無許可で一目見て凶器になると判断される銃及び刃物の所持を禁止する法である。

しかし、銃に関しては探索者も許可はされていないが、それ以外の武器の所持はダンジョン内では許可される。

ダンジョン1階層にある保管施設にて受け取りダンジョン内で認められていた。

さて、中学からは武器の使用方法などのレクチャーが開始される。

他にも、斥候訓練などまるで何処かの特殊部隊ですか?と言いたくなるような訓練内容ではあるが、必要と判断されカリキュラムに導入されている。

ここでは総合的に何でも出来る様にと色々な訓練が執り行われるが、中等部1年からは武術訓練と共にサファイバル術や小学部と同じく体力向上プログラムも各種執り行われる。


「奈美~」

「何~?」

「武器どうする?」

「薙こそ如何するの?」

「質問返し止めれ!!まぁ俺は取り合えず、メイス系?」

「はぁ?剣とかじゃないの?」

「おま、メイスの何が悪い!!」

「いや、以外だと思って・・・」

「撲打武器最強だぞ!!」

「その心は!」

「丈夫!!」

「ほう!」

「取り回しが簡単!!」

「へ~」

「メンテナンスも楽だし、まぁ剣とかだと刃が欠けると一気に戦力低下するしな~」

「あ~そだね~」

「最初は撲打武器覚えてからと考えてる!!」

「へ~色々考えているんだな~」

「考えているけど、親がな・・・」

「あ~薙の父ちゃんが使ってたのか・・・」

「いや、母ちゃん・・・」

「お前の母怖えな・・・」

「言うな・・・所で、奈美は如何する?」

「そうだな~」


教室のそこかしこで武器についての話題で盛り上がっている。

探索にしても護衛にしてもダンジョン内ではモンスターとの戦闘は避けがたい。

その為、武器の使用方法等々の武器関連の技術習得は必須である。

それに、中学生にもなれば、いや、探索者を目指す者たちにとって武器と言うのは胸アツアイテムであろう。

話題は盛り上がる一方で、尽きることなどあり得ない。


「よう!お二人さん」

「おす!」「ちゃお~」


声を掛けて来たのはクラスメイトで名を小碓おうすたける

イケメン爽やか系の如何にもスポーツ万能です感を漂わせる彼は、3人目PTメンバーである。


「何話してたの?」

「武器についてだな」


俺が答えると顎をしゃくって先を促す。


「俺はメイスとかの撲打武器を最初に覚えようかと思ってる」

「へ~撲打武器背負って「一狩りしようぜ!!」てか?」

「お前、ゲーム好きだよな~」

「おう!俺はゲームでつか」

「剣か」

「おいおいおい!!先に言うなよ」

「いやゲームで使ってって言えば直ぐ解るだろ?」

「う~」


これ以上言い合いは不毛と諦めた武は奈美に「お前は?」と聞く。

俺もまだ聞いていないので知りたい。


「バランス的に遠距離かな~と」

「ほ~遠距離か~」

「そう!」

「銃か?」

「銃はコストも考えると・・・って、その前に法律で駄目だろ!!」

「だよな~」


奈美と武の漫才のような掛け合いが続いた。

奈美は弓かボーガンを検討するとのことだ。


彼らも後3年で入ダン出来る。

中等部入学と言う節目よりもその事で身が引き締まる思いの面々であった。

しかし、それだけではなく武器を扱えるようになる、また、本格的にダンジョン探索に必要である技術が学べることへの高揚感で話は盛り上がり、話せば話す程に一層盛り上がった。

それは、このグループだけではなくクラス全体、新中学一年生の学年全体が盛り上がり浮かれていた。

しかし、この雰囲気をぶち壊す出来事が今まさに起ころうとしていた。

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