第9話
旧統一教団は年に数回、ミサと言う謎の集まりを行い、急用がある者以外は殆ど必ず参加する。
ミサとは名ばかりで、SEX教団宜しく酒池肉林の宴が催される。
このミサを楽しみにしている男性教団員や一部には女性も居ると言う。
女性の中には嫌がる者も多かったが、子を成す事こそが教えの遂行の為と言われれば従わざるおえなかった。
そう考える様に洗脳を受けていたのである。
本当の親父が解らないままに産まれる子供は割と多いが洗脳された者たちにとってはダンジョンへ向かう為の先兵を産んだ誉とでも思うのかもしれない。
洗脳されているとは言え、狂っていなければ受け入れるのは難しいのではないかと思えるが、教団に所属する女性たちは進んで身を指し出し、男性は嬉々としてそれを楽しんだ。
現在、ダンジョンが生まれて教団理念が変質し、合同結婚式が行われるようになってから14年ほどの年月が経つ。
教団内ではこの子供たちのことを第二世代と呼ぶ。
そう言う子供たちは嬉々としてここ出雲D専に入学して来た。
親も協力的だ。
この子供たちは同じ教団の信者として仲間として群れる。
生まれた時から同じ価値観で洗脳を受けた子供たちである、同じ目標もあり結束は固く知り合いでなくても直ぐに同族意識が生れた。
また、それ以外にも不良で手に負えなくなった子供を半ば強制的にこの学校に放り込んだ親も居る。
彼らは親に見捨てられた子供となるが元が不良だが勿論の様にショックを受ける。
言っても多感なお年頃なのだ。
この動きはD専でも注視しているが、ダンジョンに向う者たちに容赦はしない。
いや、出来ない。
ここでは容赦する=見捨てると同意義なので、教師も軍隊式に厳しいが、出来るだけ見捨てない方向で接する。
親に見捨てられたその子供たちは後々、この見捨てなかった大人たちを慕うようになるが、それはまた別の話だ。
親に見捨てられたことで殆どの者が覚悟を決め事に当たるが、不良である。
変にプライドが高い為、小学部からエスカレーター式に上がって来た者に対しある種のエリート視してしまう。
しかし、震災孤児として数年前まで見下していた者に対してエリート視するのはプライドが許さない。
その感情が邪魔して歩み寄りも出来ない状態で同じ境遇の元不良で群れてグループが出来た。
今回、喧嘩を売ったのは前者、教団第二世代の子供たちだ。
西日ノ本大震災当日はどんな偶然なのか、全国規模のミサが東都と大坂の2都市で開催されていた。
教団の探索者の殆どは嬉々としてそちらに参加した為、震災やモンスターパレードで大きな被害は受けずに済んだ。
これを教団関係者は神の導きなどと嘯く。
神?教団の神とはダンジョン。
ダンジョンを御神体の様に考えて崇めている。
本当に狂ったカルト教団ではあるが、山などを御神体とする自然崇拝に通ずる物ではあるが、異世界の扉を、モンスターを生み出す場所を御神体とするのは真面な考えなのか疑わしいが、そういう価値観の基に信仰心を醸成している。
「俺達の親?」
「お前の親が何だってんだよ!!」
「うちの親は世界平和統一人類保管連盟所属の探索者さ」
「はぁ~?旧統一教団か・・・」
「なはははははははははははっは~旧とか呼ぶな!!」
世界平和統一人類保管連盟(旧統一教団)の者たちは「旧」の文字に拒絶反応と言えるまでに言われることに嫌悪を感じる。
「統一教団」と言われるのを許せても「旧」の文字を入れられると途端にキレる者が多い。
この日、教団第二世代の子供たちと元探索者の震災孤児の子供たちの間に因縁が出来たのかもしれない。
その後は罵り合いに発展し、暴力に移行する一歩手前で駆け付けた教師によって止められて指導を受ける事と成る。
その日を境にこの教団第二世代の子供たちが集結しグループを作ることとなる。
それに伴い、元探索者の震災孤児のグループとそれ以外の3グループが出来上がった。
薙たちの上の世代では見られなかった現象で、教職員もこの出来事に困惑した。
探索者同士でいがみ合うことは非常に危険だ。
ダンジョン内はある種の治外法権でもある。
以前はネット配信でダンジョン内の撮影をする動画が全盛だったこともある。
この時代にある事件が頻発した。
動画主が生配信中にモンスターに襲われて死亡するケースが散見した。
勿論、これは動画の運営サイトの規定に抵触する為、直ぐに消されるが、生配信の視聴者がその動画を切り抜き拡散してしまうと手の施しようが無い為、法規制が入りダンジョン内での撮影が原則禁止となった。
この動画を取っていた者を貶める事にもなるが、それ以上にこれを見てショックを受ける者が多くなりダンジョン忌避の風潮が広がらないようにと言う政治的な判断がなされた結果となる。
搾取体質で探索者を完全に見下していた政治家たちも流石にこれ以上に探索者人口が減ることは不味いと考えたのかもしれない。
信じられない程に早急にこの規制は国会最速で可決したなどと言われている。
そのモンスターに殺されるシーンの動画は未だにスナッフフィルム愛好家の間を渡っているとかいないとか。
そういう経緯から動画撮影の原則禁止になったダンジョン内では殺人が横行しても証拠が見つかることは殆ど無い事と成る為、探索者同士の死闘は勿論禁止だが、人と言うのは群れれば争うことも多々ある。
この流れは余り宜しくないが、年端の行かぬ子供たちのことの為、教師陣も手をこまねく形となる。
「喧嘩両成敗だ」
教師たちの下した処分は喧嘩した者たちに平等に言い渡されたが、お互いの主張がぶつかる場合、平等な裁きと言うのは両者に恨しか残らない。
方や親の悪口、方や自分たちの信じる教団の悪口。
人が争う際のその多くは自分の大事なものが貶される・奪われる等々のことであるが、今回はまさにそれが起こったと言えるのかもしれない。
出雲D専に暗雲が立ち込める。
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