第10話
「奈美は親たちのこと知ってたか?」
「う~知らなかった・・・まさか薙の両親と私の親がな~」
「同じPTメンバーだったとはな」
「運命だね」
奈美はニッと笑ってそんな事を言う。
「言ってろ」
俺もそう思ったが奈美に言われると何だか恥ずかしくなりそっぽを向いた。
耳が熱いし顔も火照っているようであるが、奈美に気付かれたかな?
ニシシと笑いながら俺の頬を突きながら「え?何恥ずかしがってるの~?このこの~愛い奴め」と言う奈美。
どうやら、気付かれているようだ。
そんな最中、怒号が聞こえて来る。
奈美と顔を見合わせ、そっとそちらの方へと移動する。
「俺達の親はモンスターパレードに立ち向かったんだ!!」
「ははは~結果伴ってないとか笑える~」
「な、何だと!!」
「そうだろ?結局はモンスターパレード止められずに被害出してるじゃん」
「そ、それは・・・お前らの両親なんて大変な時にアンアン言ってただけじゃないのか?」
「はぁ?どういう意味だよ!!」
「お前ら旧統一教団はミサと称して集団SEXしているイカレタカルト宗教だろ?」
「お前・・・崇高なミサを馬鹿にするのか!!それに・・・「旧」と呼ぶな!!」
言い争いの声がするのでそっと覗くとどうやらうち生徒同士が一触即発の状態の様だ。
「なぁ」
「ああ、ヤバいな」
「先生に伝えて来るよ」
「おう、了解」
そう言って急ぎ奈美は来た道を戻り、学校へと向かう。
俺は事の成り行きを見守るが、同じことの言い合いのように感じる。
それに、俺達の両親を馬鹿にするあの連中に心底怒りを覚えるし、もう一方の震災孤児の方の言い分は痛い程に解る。
結果どうこうも勿論大事かもしれないが、モンスターパレードに立ち向かったことが無駄という言い分は認められない。
両親たちが戦ったからこそ救援された者たちも多い。
確かに助けられなかった命もあるが、それ以上に多くの命を救った筈だ。
しかし、だからと言ってあの教団ののことを足蹴にするのも間違っていると俺は思うが、売り言葉に買い言葉で、既にお互いが引けない状態に陥っているようにも思う。
「お前ら!!そこまでだ!!」
奈美が先生たちを呼んで来たようだ。
奈美と合流し、俺達はそっとその場を離れる事と成る。
こういう場合は通報者にも恨みの矛先が向く場合があると豪徳寺先生は言い、その場から離れる様にと指示されてのことであった。
その後、「喧嘩両成敗」となったが、しこりは間違いなく残った。
しかし、教師たちがその判断をしたことは間違いではないと思うがその裁きにお互いが納得しないだろう。
案の定、その後は派閥のような物が出来上がる。
一部の人間はこの派閥に属さない者たちも居た。
その中の一人が俺や奈美、武等になる。
現在は教師の目もあるし派閥内で集まる程度であるが・・・
2018年、中亜の平昌で冬季オリンピックが開催された。
日ノ本の金メダル受賞者の
身体能力が向上したことが金メダル獲得の要因の1つと断言した。
これは世界中にセンセーショナルに伝えられ、ダンジョンをただの鉱山として認識であった人々の意識を変えさせる結果となる。
これを受け日ノ本政府もこの事についての調査の為の専門家チームを立ち上げることを発表。
また、週刊誌が現役探索者へ取材を行い「身体能力向上はあるのか?」の質問したところ「Yes」の回答を得たことでダンジョントレーニングを考える向きも出て来る結果となる。
オリンピック自国開催が決まった事により世論はこのダンジョン内トレーニングを取り入れる為に法改正を望む風潮が生まれる。
その背景にはやはり自国開催時の多くのメダル獲得の期待からであろうが、選手たちもそれを望む声が大きくなり、一部選手がダンジョン内ブートキャンプを行うに至る。
その結果を受けて、政府もダンジョンの規制緩和の波に飲まれる。
その中でも、大きく動いたのが年齢制限の引き下げとなる。
当時、オリンピックの出場の最低年齢が15歳であった。
オリンピック開催時に15歳の選手がこのキャンプを受けることは出来ない為、不平等であると言う選手と世論の声が高まると、特例での入ダンの年齢が引き下げられ、又、正規の入ダン年齢も引き下げる法案があっさりと可決された。
特例での入ダンは13歳から、正規の入ダンは16歳からと言う引き下げで与野党合意であっさりと可決。
両方共に2歳前倒しとなった。
その動きは出雲D専のカリキュラムにも影響を及ぼした。
「お前たちも知っているかと思うが、特例の入ダン年齢が13歳になった」
生徒たちは先生の発言で何かを予感した様に騒めく。
「静かにしろ!」
一人の生徒がすっと手を上げる。
「何だ?」
「はい、お聞きしたいのですが宜しいですか」
「まぁ察しはつくが、何だ?」
「はい、ダンジョンに入れる年齢が下がったと言うことは来年から入ダン出来るってことですよね?」
「そうだが、今からそれらについて説明するので、それを聞いてから質問しろ、良いな?」
「はい」
先生の指示に従い、その生徒も黙り、聞く準備を整える。
先生曰く、出雲D専のカリキュラムが一部変更になるとのことだ。
変更内容としては、3年間の教育自体は変わらないが、入ダン年齢引き下げに伴い、実地訓練が中等部時にも行えるとのことで、野外訓練予定の物がダンジョン内訓練へと変わるとのこと。
例えば、野外キャンプ訓練がダンジョン内キャンプ訓練に変わる等々である。
ダンジョン内では5人PTを組み、引率者1名の探索者が付くことで実地訓練も行うことが決定しているとのことだ。
その事でクラスが沸き立つ。
隣のクラスからも騒ぎが聞こえるので同じく喜んでいることだろう。
さて、それにより来年から入ダン出来るが安全性の確保も考えて今年の訓練からビシビシと鍛える旨の通達がなされた。
ダンジョンに行く者たちにとっては望むところであろうが、一部の生徒は「これ以上辛くなるのか」等の声も聞こえたが、彼・彼女らもやらない訳ではなく、訓練内容のきつさがUPすることに辟易としつつも自分の命に係わる事なので文句も言えないジレンマからの嘆きなのであろう。
それにより俺達もPTメンバーの募集となる。
現在は俺(薙)・奈美・武の3人なので2人の増員が必要だ。
しかし、あっさりと武が連れて来た。
「
「
両道さんは幼馴染で、橘さんは絡まれていた所を助けてから仲良くなったそうだ。
うん、武はハーレム体質なのかもしれない。
さて、これでPTは揃ったので早速とばかりに申請をすると、クラスで1番の申請となった。
後日、運の良い事に豪徳寺先生がPT指導者として俺達に付く事となった。
作為的な匂いもするが、運が良かったと言うことにしておこう。
さて、何故この段階でPT編成を指示されたかと言うと、今の内からPT行動をして来年に備える為とのことだ。
「「よろしく~」」
俺と奈美が2人に挨拶する。
武がそれを見ていて要らぬ事を言う。
「2人とも息が合っているだろ?」
「はい、ピッタリです」
「うん!ツーカー」
両道さん・橘さんも続けて感想を述べる。
武は俺と奈美のことをどの様にこの2人に話しているのか気になるが、追々確認して行こう。
さて、
弓矢が得意とのことでそっち方面を先ず鍛えるとのことだ。
小柄だ小回りが利くと本人談、忍術を極めるとか何とか・・・斥候職希望。
両道さんが弓矢と言うことを聞き、奈美も少し考えることとしたようで、遠距離職では無くて中距離も検討しだした。
俺・武が前衛で両道さんが遠距離、橘さんが斥候なので中距離要員が欲しいと言うことで奈美が中距離を考え始めたが、遠距離でもいいと思うのだが、バランス的には中距離入るとベストなどと奈美の価値観でそう言うので特に俺たちは意見しない。
奈美の好きな様にすると良いと思うぞ。
結局、奈美は中距離職を選択したようで、槍をチョイス。
俺達はワクワク感と共にPTでの行動をにどんどん慣れて行った。
しかし、D専内では不穏な空気が漂い始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます