❀ エピローグ ❀
数年後、大学を卒業した俺たちは、それぞれの道に進むことになった。
俺はイベント企画や制作、運営などをする企画会社に就職をし、
就職が決まった後、俺たちはお互いの両親を前に自分たちのことを話した。一緒に住むこともそうだが、恋人同士であることも。どんな反応が返って来るかは覚悟の上で、俺は
「まあ、カイくんったら、結婚報告かと思ったのに同棲報告? でも、そんなの今更よね〜?」
「いつ言ってくれるのか、どきどきして待っていたのに、そっちの方?」
俺の母親と
「え? ママたち、なんで教えてくれなかったんだい? というか、知ってたの?」
「
父親たちはかなり驚いていた。こっちが普通の反応だろう。けど、誰ひとりとして嫌悪感を表すことはなく、なんなら微笑ましい視線を俺たちに浴びせてくる。
「びっくりしたけど、でもなんだか腑に落ちたというか。
「うちの
「ち、違うよ? 俺もびっくりしてるんだから!」
こうして、俺たちは親公認姉公認友だち公認の仲となり、現在に至るのだった。
あの時のことは
まるで夢みたいな現実。せめて俺だけは、あのセカイで出会ったみんなのことを、ずっと憶えていてやろうと心に決めた。
******
高校二年生の夏休み。
俺はBLはよく知らなかったけど、
その隠しルートを、絵師のキラさんがシナリオを担当した
今は夏休み。たまに園に雑務をしに午前中だけ出勤することもあるけど、今日は完全に休みだったので、掃除をした後は夕方までのんびりと好きなように過ごしていた。
「
「大丈夫。俺も今来たところだから」
今日は夏祭り。毎年この公園に屋台が並ぶ。花火など派手な演出はないが、一列に向かい合うように並んだ様々な屋台は圧巻だった。薄暗くなった空とは正反対に、この辺りだけ異様に明るいし賑わっている。
「こんなに人が多いと、手を繋いでも誰も気付かないかも?」
言って、俺の左側に立ち自然に手を繋いでくる。指を絡め合うようにしっかりと繋がれた手に、熱が伝わってきた。俺たちはあの日からずっと、恋人同士で。今は一緒にマンションで暮らしている。
家賃や光熱費や食費、生活に必要な費用は半分ずつ払う。家事はお互いに得意なことを。たまに時間があれば、一緒に料理をしてみたりもする。
くやしいけど、料理の腕は
仕事は俺は基本的に定時だけど、
「毎年、
それは俺たちが付き合ってはじめて、ちゃんとしたデートをしたのがこの夏祭りだったからだろうか。あの時は
自宅以外では眼鏡をかけて欲しいという、
「あ、うさぎ先生だ!」
ぎく、と俺は思わず
「こんばんは、りゅうくん。あ、気を付けて? はい、しっかり持ってね? ええっと、お父さんとお母さんも一緒かな?」
りゅうくんは持っていたリンゴ飴を落としそうになり、俺は慌てて空いている方の手でキャッチする。中腰になって目線を合わせようとしたら、
気を遣ってくれたのかな? 俺はそのまましゃがんでりゅうくんを見上げる形になった。
「ママはあそこ! パパはね、お仕事いそがしいんだって」
「そっか。一緒に来れなくて残念だね」
「うさぎ先生は、おともだちといっしょ?」
そうだよ、と俺は眼を細める。俺たちは恋人同士だけど、世間一般からみれば友だち同士でしかない。こういう時、ちょっぴり悲しい気持ちになる。
「めっちゃかっこいい! げーのーじん⁉」
「そうだよ。だから、ママには俺たちと会ったこと、内緒だぞ?」
なんでそんな嘘つくんだろう?
「わかった! 男と男の約束だねっ」
「そうそう。じゃあ、俺たちはお忍びだからここでバイバイだ。りゅうくんも、寄り道しないでママのところまで戻れるかな?」
「はーい!」
「か、
りゅうくんは大きく手を振って、それからまっすぐに母親のところに戻って行った。俺の腕を掴んで立たせてくれたのはいいけど、あんなことを言った理由をちゃんと説明して欲しい。俺は
「
「子ども相手に?」
俺は呆気にとられる。仕事以外の時間は、ぜんぶ
「笑うなって。俺はものすごく嫉妬深いんだからな。知らないとは言わせない」
「はいはい。じゃあ、デートの続き、しよ?」
くすくすと笑いながら、俺は
「帰ったら、いっぱいえっちなことしような? 明日休みだし」
「
耳元で囁かれた台詞は、俺の耳を真っ赤にさせるには十分だった。ふざけて言っているのは百も承知だったけど、不覚にも想像してしまった俺は、当分顔を上げて歩けない。
「俺の隣は
言って、
この先、何年、何十年経っても、
「
賑わう公園から外れた場所。花壇の前。ここは昔、
「あの時の願い事は捨てられちゃったけど、なにを書いたかは憶えてる?」
「····うん、憶えてる」
俺たちはお互い、願い事を書いた紙をお菓子の缶に入れたんだ。
「俺は
「うん、」
「
「うん、」
俺はじっとその瞳を見つめて聞き入る。握られた指先がどんどん冷たくなって、少しだけ震えている気がする。緊張しているのかな? 俺もなんだかどきどきしてきた。
「ずっと一緒にいて欲しい」
同じ気持ちを確かめ合うように、少しずつ言葉にしてくれる
「俺と、結婚してください」
子どもの頃の約束。誓い。ずっと、胸の奥にしまっていた想いも。ぜんぶ、
俺たちは見つめ合って、思わず笑ってしまった。
この先なにがあろうと、きっと乗り越えて行けるって信じてる。
ふたりなら、きっと――――。
◆ 最終章 ~了~ ◆
✿❀✿❀✿❀
〜感謝〜
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。コメント、♡、★評価をくださった皆さま、そっと見守ってくださった皆さまに感謝♪
また、『あとがき』のようなものをつらつらと近況ノートに書きましたので、よろしければ↓
https://kakuyomu.jp/users/yuzuki02/news/16818093086604385279
❀✿❀✿❀✿
皇帝の溺愛する花嫁が、負け確定イベントを回避した元モブ暗殺者だった件。 柚月なぎ @yuzuki02
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