夏蜜柑

　蜜柑はひと夏の恋をした。
　田舎に住む祖母は駄菓子屋を経営していて、夏休みの間は毎年手伝いに帰省していた。いつものように店番をしていると一人の少年がやってくる。名前は柊と言うようだ。祖母とも顔見知りの知り合いらしく、祖母からよろしくされたのをよく覚えている。
　彼は毎日のように駄菓子屋に顔を出す。蜜柑と同じ学生で、野球部らしい彼は大きなエナメルバッグを持って額に汗を滲ませている。家が遠いらしくここが休憩場所のようだ。
　たった１ヶ月ちょっと。柊と蜜柑の交流なんてそんなものだった。でも優しくて、何かに真っ直ぐ向き合っている彼に惹かれずにはいられなかった。