第9話
◆
「……せい、美蘭先生。起きてください!」
「んんっ。おや、ここは何処だい?」
「私も分かりません。あそこに飲み込まれて気づいたらここに……」
そうだ、ボク達は捕まったんだ。それにしてもあの土人形、神性を帯びていたような……
いや、気の所為だろう。きっと一瞬の出来事だったから見間違えたんだ。
「アイタタタ……、腰を痛めたかな?」
「先生、もしや急にお年を召されたのですか!?」
「そんな訳ないだろう!? ここが地べたで、さっきまで寝てたからだよ! ボクは後衛だから君等と違って、か弱いの!」
この子は一体どんな発想をしてるんだ。
まさか20半ばで年寄り扱いされるとは思わなかったよ。
よく見てほしいものだね、この愛くるしいボディをさ!
「あの、先生? それでは私や
「そこまでは言ってないよ。そこまでは、ね」
近い事は思ってるけどね。
とは流石に言えない。というか思ってもいないしな。ただ腹いせがしたかっただけなんだ。
珍しくショックを受けている彼女を見ながらクスクス笑っていると、急に俯いてしまった。少し言い過ぎてしまったかな?
「ご、ごめんよ。実はそんな事はこれっぽっちも思ってないんだ。ただ、君のそんな姿は滅多に見れないから遊んでしまったのさ」
「……」
や、ヤバイ。泣かせてしまったか?
こんなダメダメオタクを信じてくれる心優しい生徒を傷付けてしまったかもしれない。
そうなればボクは真莉君や彼女の親御さんに合わせる顔がなく、ついでに職も失うかもしれない。
それだけは避けねば……
「ふふっ、うふふふ……。大丈夫ですよ、美蘭先生」
「ほ、本当かい?」
「ええ、もちろん」
それは良かった、と素直に言えない雰囲気がある。
なんというかこう、身の危険を感じる圧があるのだ。今の彼女には。
「だって、認識が間違ってるなら正しく覚えて貰えばいいだけなのですから」
「? いや間違ってるつもりは……はっ」
しまった!
ボクとして事が、この子の本性を忘れていた。
そう、この子は……
「偶には生徒が先生に教える、そんなプレイもアリですよね?」
レズビアンだったのだ。
即座に使える限りの逃走用の術を展開し、思いの丈を叫ぶ。
「私はノーマルだ〜っ!」
「うふふふふふ……、女の子の良さ
このままだと食われる。
そんな、とても可愛い生徒との戯れ合いとは思えない強迫観念に襲われたボクは、それはもう全力で逃走し、なんとか彼女の魔の手から逃れる事に成功した。
そして……
当然の結果として、ボクと狼茄君は
どうしよう、一人じゃ怪異に近付かれたら抵抗出来ないんだけど……
◆
俺は
このステージの序盤は配置場所がランダムであり、運が悪ければ墓石に頭をぶつけてロリ先生が死んでいる事を除けば、極めて貴重な安全地帯だ。
なお、
さて、このままココで『栄養剤(超)』の副作用をやり過ごそうかと思い、痛みだした頭を抱えて横になっていたが、ある問題が起きた。
「いーやーっ!」
「グヘヘヘ」
「っ!?」
それは忌まわしい主人公勢の声。
ゲームでは、このやり取りの後に離れ離れとなった二人はそれぞれで攻略する事にをなるのだが、大体なんとかなるのだ。
問題は
腐っても神格を持つあの即席邪神は強大で、序盤のレベルでは一人で太刀打ちなど無謀に等しい難易度となっている。
まぁ、無謀そのものではないので勝てなくはないのだが。
仕方ない、俺はとても動けるポテンシャルではない。怪異からやり過ごすための墓石の下にある納骨スペースに入ろう。
「安全地帯だけど動いてくれよ」
祈が通じたのか、何箇所か調べた後にしっかり動いてくれてくれる墓石があったので隠れる事に成功する。
ゲーム時代では、隠れる必要があるのは怪異の出現する通常地帯だ。従って安全地帯であるこの場所はゲーム時代では隠れる事は不可能だったのだが、何とかなったらしい。
現実化万歳だな。
「あ、やばい」
これまでとは比較にならないほどの頭痛と吐気が襲う。
それから俺は死んだように眠りについた。
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