第13話

ひいらぎ狼茄ろか side








「大っきいですね……」




 それが人生初の巨人を見た感想だった。


 彼女のイカれた戦闘力の一端は実家の古武術道場にあり、なんだかんだ敵意の有無を見分けられるので、襲いかかるという愚行をせずにすんだのだ。




「まぁ、生殖器があったら斬り落としてましたけどね」




 巨人達に男女の性別はない。従って狼茄の地雷を踏む事はなかったのだ。


 微笑みながら告げる彼女は、見た目とは裏腹に焦っていた。やはり理由は小日出美蘭ロリ先生である。


 彼女は男性に振られすぎて憎んでいる反面、自身を受け入れてくれる相手を探している。


 ぶっちゃけチョロいのだ。


 万が一にも先生が好みのGがいた場合、落とされてしまう危険性がある。


 彼女はそれが怖かった。


 そんな事態に陥った時、仮にロリコン諸悪の根源を討ち滅ぼしたとしても、美蘭の心が自分に戻って来る保証はないのだから。




紳士ヘタレ求道者自己中軟派、男なんて碌な生き物じゃないのに、どうして世の女性は異性愛者ノーマルを公言し、女の子を求めないのでしょうか」




 本当に不思議ですね。


 なお、金剛真莉に関しては命の心配はしてるものの、落とされる心配はしていなかった。








落合おちあい雪羅せつら side








「それでもボクは異性愛者ノーマルだ!」



「喧しいわ!」




 一体なんの宣言だ。


 あれか? クレイジー・サイコ・レズビアン主人公に狙われ過ぎて、常に自分へ言い聞かせてないと同性愛に染まりそうなのか!?




「うっ、ごめんよ。どうしてもツッコま叫ばないといけない気がして、つい……」




 どうやら不思議ちゃんだったらしい。


 今だけでも合法ロリ、ボクっ娘、女教師、貧乳(絶壁)、魔法使いとパッと思い付くだけでもこれだけの属性があるのに、まだ付け足すのか。




「オイ、また失礼な気配を感じたぞ。どういう事か説明してもらえるかな?」



「……」




 ……やっぱり不思議ちゃんではなく、さとり妖怪かもしれない。


 年相応に見えないのも、きっと妖怪だからなのだろう。きっとそうだ。




「お前も大変だな」



「よく分からないが、とっても不本意な気がするぞ!? いい加減にしないと温厚なボクでも怒るからな」



「ろ〜り、ろ〜り、合法ろ〜り」



「積もりし穢れ───」




 おっと、術失敗ファンブルのトラップを踏んでしまった。


 これで5分間オカルト系能力は全て失敗した挙げ句、自分にダメージを与えてしまう。なんてことだ(笑)



「ピギィッ。ど、どうして術が暴発を……」



「知るか下手くそ」




 少し背中に衝撃はあったが気にはならない。むしろ、あのスライムみたいな悲鳴のが気になった。


 巨人徘徊このステージは、もう少し続くだろう。それまでにトラップの効果は切れるから問題ないはずだ。


 その時は彼女に力を貸してもらうとしよう。その時まで一緒にいればな。


 その時だった、巨人の足音の合間にヤツ・・の声が聞こえたのは。




「せんせぇ、どぉこでぇすかぁ〜。貴女の狼茄ろかが迎えに来ましたよぉ〜」



「「!?」」




 思わず声を潜め、身を固くする俺達。


 しまった、これでは俺がクレイジー・サイコ・レズビアン主人公知って恐怖している事がバレてしまう。


 距離を考えれば小日出に聞き取れるとは思えないのだが、なぜ反応出来たのだろうか。




「……き、君も彼女の気配を感じだったのか? 実は彼女、ボクの教え子でね。ちゃ、ちゃんと人間だから安心していいよ。……多分ね」




 どうやら声が聞こえたわけでは無いらしい。


 つーか、そんなに震えながら言われても安心できるわけないだろ!


  いや、そもそも男の俺が小日出美蘭ハーレムメンバーを背負ってる時点で安心感なんてないけどな。




「……教え子なら合流してやったらどうだ?」




 まず行けない・・・・事は分かっていて、そう言ってやる。


 本当に行かれたら俺の居場所がバレて、裁判抜きの拷問極刑ほぼ確定だから逃さないけどな。あれ? なんで俺はこんなロリ先生死亡フラグを背負ってるんだっけ?


 やっぱりコイツ捨ててった方がいいかもな…………主人公処刑人が、どっか行ったらな。


 今は近付いてきてるので待機である。




「ボクは貞操の危機なんだよ!(小声) こんなに震えてるんだから察したらどうだい!?(小声) あともしボクを捨てたら呪ってやるから覚悟するように!(やっぱり小声)」



「そんな奴のどこに安心すればよかったんだよ!(小声)」




 あと心を読むな。


 さて、この疫病神と言ってもいいロリっ娘お荷物と何処に逃げたものか。生半可な逃げ方では、クレイジー・サイコ・レズビアン主人公を撒く事は不可能なのだ。


 




「おや? こちらから先生の匂いがしますね。この辺にいるのでしょうか?」



「「!?!?」」




 匂い!? 匂いつったか、あの主人公変態!? 背負ってる上に超高校級の五感を持つ俺ですら薄っすらと感じられる程度の匂いを感じだったってのか!?


 今度は声が主人公の声が聞こえたのだろう、恐怖と罪悪感で顔を歪めたロリっ娘戦犯は涙ぐんでいる。


 それにしても匂いが原因か、想定外にも程があるぞ。


 匂い、におい、臭い……はっ!


 と、ここで一つの策が浮かんだ。ゲーム知識と合わせればギリギリ現状を脱却できるかもしれない。




「俺達に潜伏の術を使ってくれ、匂いとかも消せるやつ(超小声)」



「(こくこくこく)」




 俺の背に縋りつきながら鼻も垂らす彼女は全力で頷くと無我夢中で行使する。


 しかし、それだけで主人公変態からは逃げられない。


 故に俺は手に入れたばかりの靴下・・を設置すると、少し離れたところに巨人の足跡があったので、ホラゲらしく身を隠した。

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