第10話
◆
「
ボクは今、骸骨の群に襲われていた。
普段なら何て事ない敵だが前衛がいない今、尋常ならざるピンチである。
どれくらいピンチかと言うと、恥知らずにも自分で振り切った生徒に助けを求めるくらいピンチだ。
プライド? ないそれ美味しいの?
「せめて、待機術式を使い切ってなかったらなぁ」
狼茄君から逃げるには、コツコツ作った
完全に後の祭りだ。
「うおぉぉぉぉぉっ! 急急如律令、縛」
あとで手痛いしっぺ返しがある事を覚悟して金縛りの術式を展開した。
焦ったため、過剰な霊力を注ぎ込んだ術式は、しっかりと
「あっ、あれは」
偶然見つけた墓石のズレた墓。
確か墓石の下には納骨スペースがあった筈だ。ボクの小さな体なら入れるだろう。
「一角の星鬼よ、我に怪力乱神を与え給え」
筋力強化のバフを唱えて、穴に転がり込み墓石を定位置に戻す。その時に何か生暖かいクッション性のようなものに当ったが気にしてる余裕はない。
一旦これで大丈夫だろう。
僅かに感じた安堵からか披露がドッと出たボクは睡魔に身を任せた。
◆
「ギィャァァァァァァァァァァァァァッ!」
「ふぁっ!? な、なんだい? てか誰!?」
目が覚めたとき、なんか体の上に乗ってるなと思って充電切れ間近のスマホのライトで照らしてみれば、我が怨敵の一人である
なんで? はっ、なんで!?
不覚にも叫んでしまった俺は身の上のロリっ娘を起こしてしまう。でも仕方ないだろ、俺からしたら寝起きで死神の顔を見た気分だったんだから。
「あ〜、その学生君かな? ボクは小日出美蘭と言ってね、
俺の学ランを見たのか、大人をやたら強調するロリ先生。どうか安心してほしい、アンタみたいな
「それはそうと、少し不用心だぞ」
「え、何が?」
「墓石、戻し忘れてただろう?」
「あ……」
言われてみれば確かにそうだ。
恐らく彼女が入ってくる時に元へ戻してくれたのだろう。ん? この貧弱ボクっ娘ロリ先生が? 墓石を動かした? どうやって??
「先に言っておくが!」
「え?」
「僕は霊術で動かしたのであって、決してボクが筋肉ゴリラなどという事実はないから、よぉ〜く覚えておくように」
「あ、はい」
両頬をガシッと掴んで念を押す彼女は、よほど怪力だと思われるのが嫌なようだ。
俺、身の丈に合わない武器を使う幼女キャラ好きなんだけどな……。
まぁ、元社会人としては合法であってもロリとお付き合いは心情的にハードルが高過ぎるから、恋愛方面への発展はしないがな。
「カッチーン。今、尋常じゃなく失礼なこと考えたね? ボクは特に鋭いから気を付けるといいよ」
「わ、わかった。分かったから頭を壁に押し付けるのは止めてくれ」
大して痛くないけど、目がキマってて怖すぎる。
これ以上、怒らせると詠唱を始めそうなので思考にも気を付けよう。やっぱ、ヤベーな主人公勢。
「てか、術式使えるなら何で逃げてたんだ? ここの敵は弱かっただろ」
ここが最大の謎だ。
ゲームでは、このステージでは雑魚敵に無双状態であった彼女が、わざわざこんなところに入ってきた理由がわからない。
まさか、もう
「やっぱりボクの事を隠れ筋肉ゴリラだと思ってないかい? 生憎と見ての通りか弱いのでね、近づかれると逃げるさかないのさ」
こんなところで現実化の弊害が出ていたか。
ゲームではターン制であったため問題なかったが、今は敵の攻撃を待ってくれる相手など存在しない。
むしろ考えなしに突っ込んでくる奴のが多いだろう。後衛ソロには厳しい状況だ。
「悪かったな。術には詳しくなくてね」
なんなら近接戦闘にも、そこまで詳しくないです。
さて、そろそろ『栄養剤(超)』の副作用も切れてきた。これ以上、密室で天敵といたら気が狂ってしまう。
どこぞのクレイジー・サイコ・レズビアンに、この状況を見られたら裁判なしの極刑まちがいなしだからな。拷問付きで。
適当なこと言って、さっさと出よう。
「さて、こんな気遣いの足りない男は退散するよ。気を悪くさせてすまなかったな」
そうして、ロリ先生の
互いの体を入れ替え、出るまであと一歩というところで足が重くなる。比喩ではなく物理的な意味で。
「君は、ほんっっっっとぉぉぉぉに気遣いが出来ないんだね。さっきの話を聞いてか弱い女の子を置いてく男が何処にいるんだい? ええ?」
ここにいます。
そして貴女は女の子なんて歳じゃ……って、しまった!
「誰が年寄りだっ! 積もりし穢れよ。汝に───」
「そこまで思っとらんわ! さっさと詠唱やめやがれ、このバカ」
「誰がバカだ! もういい、ぶっ殺してやる!!」
「やってみやがれ、その時アンタは骸骨に
「きぇーーーーっ」
ギャイギャイと騒いでいれば当然、敵が寄ってくる。それを子なきババァを背負いながら倒すハメになった。
つーかここ、安全地帯じゃなかったんだな。いま知ったわ。
「今度こそ、今度こそ年寄り扱いしただろ!」
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