第4話

落合おちあい雪羅せつら (本作主人公)side








 主人公のゴキ◯リ呼ばわりへのツッコミを何とか口に出せずに済んだ後も、彼女達の会話は続いていた。




「はぁ、しかし君達も少しは遠距離戦闘できるようになってみないかい?


 正直、ボク1人で回復、バフ、デバフ、遠距離攻撃は厳しいモノがあるよ」



「私、遠当ては苦手でして。刀があれば話は別なのですが」



「力こそパワーですわ!」



「……そうかい、もう十分だ」




 頭痛を堪えるロリ教師に少し同情した。


 そうだよな、ターン制のゲームで消費アイテムも豊富にあったから何とかなってたが、現実で考えると前衛後衛のバランス狂ってるとしか言えない。


 まぁ、死んでもらうんだけどな!


 『黄泉戸喫ヨモツヘグイ』はもとより、彼女達がいる場所には偶然見つけた初見殺しデストラップを置いてある。というか、いらないので放置した。


 微妙に隠してあるから簡単に見つけて違和感なく手に取るだろう。




「あら? この御札おふだは……」




 さぁ、ゲームとバッドエンド同じ道を辿るがいい。








クレイジー・サイコ・レズビアン原作主人公 side








「あら? この御札おふだは……」




 砕けた壁の穴に入っていた御札があった。古ぼけた見た目通り崩した古臭い字体で書かれたコレは、私には読めない。




美蘭みら先生、読めますか?」




 読めぬならなら、読んでもらえばいい。小柄な体躯に見合わなぬ豊富な知識を持つ先生に助けを求めた。


 美蘭先生は幼く見られやすい分、頼られた時や大人扱いされた時は分かりやすく機嫌が良くなり、とても可愛らしいのだ。




「あの、なんでアタクシには聞かないんですの?」




 脳筋お嬢様まりさんは、ね?




「むふー、やれやれ生徒にそこまで言われては仕方ない。どれ、貸してみたまえ」



「ねぇねぇ、なんでですの?」




 案の定、嬉しそうに力を貸してくれる先生。思わず抱き締めたくなってしまう表情ですね。


 真莉まりさん、瞳孔開いてますよ? もはや友達に向ける目じゃなくなってます。まぁ、それでも可愛いので全然アリですが。


 これぞ、まさにハーレム。ここの怪異(?)を殲滅したら3人の愛の巣にするのもいいかもしれません。現世向こうと行き来できるなら、ですが。


 と、ここで御札を渡した先生の顔色が変わってきました。承認欲求を満たされた幼子から百戦錬磨のオタク探求者へと。


 これは、不味いですね。




「ふむ、これは凄い。それなりに、ありふれた『火迺要慎ひのようじん』の御札だが珍しい事になってるよ。

 え? 何が珍しいかだって?(言ってない) 

 そこまで言うなら語ってあげるとしようか。(誰も何も言ってない)

 君達にも聞き馴染みがあるこの言葉は、かの有名な愛宕あたごに由来するものなんだ。

 さて、この御札なんだが本来は火防の効果があったのだろうが、役目を終えても然るべき手順で供養されず長年放置でもされていたのだろうね、溜まりに溜まった邪気が性質を反転させ火の厄災を振り撒く呪具となっているよ。

 なに、心配しなくていい。君達が迂闊に使えば死は免れないが、正しい知識と技術を持ったボクのような人間が使えば強力な炎術を放つ武器となり───」



「えぇぇぇぇぇぇっとぉぉぉぉぉぉ(大声)

 火を出すやつって事でぇぇぇぇぇぇいいんですわよねぇぇぇぇぇぇ?(尋常じゃない大声)」




 真莉まりさん流石です。怪異(?)が蔓延るこの状況で大声で遮る目立つなんて私には真似できませんね。


 それに訓練されて百合戦士である私でも終らぬオタク話波状攻撃はキツイので、そういう意味でも流石かと。


 とはいえ任せっきりもいけません。私は誤魔化しフォローに回らないと。




「まぁ、 殺剤ですか♪ 素敵ですね♡」




 フォローと言っても本心を語るだけなのですが、経験上これが一番上手くいくんですよね。


 そうすると何故か皆さん何とも言えない顔になってなぁなぁで終わるのです。どうしてでしょうか。




「ひぇ、ですわぁ」



「むぅ。君達、教師の話は最後まで聞くものだぞ?」



「オタクの蘊蓄うんちくは授業ではありませんわ」



「授業なら保健体育を希望します」



「君は油断も隙もないな!?」




 これで元通り。


 やっぱり3人でいるのが一番ですね。これからも、ずっと一緒にいられますように。


 もちろん、誰の邪魔も入らずに。


 そんなこんなで機嫌をなおした美蘭先生が御札の火遊びを真莉さんに見せびらかしているのを見てそう思った。

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