ふうふうふうふ。

『ふうふ見ず知らず』

まずタイトルが秀逸。森見登美彦さんあたりが長編を書いてしまいそう。どこかコミカルで、それでいて、あたたかく。少し切ない。

私たちは勝手な憶測フィルターで、『夫婦水入らず』と脳内で変換して、冒頭の新婚生活を思わせる幸せな描写を、ありがち、ととらえてしまうだろうか?

目覚めたときの別世界。幸せな光景。ここはどこ?

という白いイメージの世界を、「なんて劇団員ぽく思ってはみたが」とどこか常に俯瞰で物事を見ている主人公の造形が、冒頭で見事に見せつけられる。

私はすぐに彼の歩く空間の中に取り込まれた。頭上に繁る常緑樹の葉の隙間から落ちてくるのは、ピンクチラシだったり、鼻をかんだティッシュだったり、赤帽の広告だったりするのだけれど、一万円が落ちてくることもある。

そんな舞台のその先を、いつか知りたい。

ありがとうございました。