自分も世界も人間も憎んでいる系の元王女、困窮した村を救ってみる。
- ★★★ Excellent!!!
主人公の元王女は何もかもが嫌いだ。
自分を追い出した祖国も嫌いだし、そんな事をされた自分も嫌いだし、そんな事をした国民も嫌い、とにかく世界の全てが嫌い。
だけど一人だけ信頼している相手がいる。
国を追われて以来、自分を守り続けてくれる元騎士である師匠の男だ。
二人は放浪の旅の途中で困窮した村を訪れることになるが、その村はとある大問題を抱えていて――。
見所はやはり、主人公の元王女と師匠の元騎士の関係性ですね。
この世に絶望した系女子な主人公が、大人の男な師匠に見守られながら成長していく物語なんですが。
ラブラブな恋人とは違うんですよね。
言い争いになれば、感情丸出しで師匠に言葉をぶつける主人公に対して、師匠はなんなく受け流しつつも、気遣ってやる優しさをチラリと見せる、みたいな。
なので、全てが嫌いでツンツンしっぱなしの主人公も、師匠にだけはちょっぴり心を開いちゃうわけです。
兄妹のような、あるいは戦友のような微妙な距離感なのが尊い感じですねえ。
もう一つの見所は、血まみれな泥臭いバトル。
この作者さんの十八番でもあるんですが、バトルがとにかく血なまぐさい。
女の子主人公なのに、バトルシーンに可憐さなんてゼロ。
格好良いというよりも、生々しい、泥臭い、という感想が先にくる。
でもこれが、『この世の全てを憎んでる主人公』にめっちゃマッチしてるんですよ。
まるでそんな憎悪を敵にぶつけるがごとく、戦うからです。
血なまぐさい戦場は、彼女の抱く世界観そのものと言えるかもしれません。
そう、彼女にとってこの世界とは、醜い肉塊同士が相争う地獄でしかないのです。
そんな彼女が、人々の善意に触れてどう変わっていくのか?
ぜひ、皆様の目でお確かめください。