一度観た映画はもう一度、未鑑賞のものなら今すぐ観たくなる!

ひょんなことから親しくなった映画好きの男子高校生・神崎慎と、クラスメイトの女子・黒江ナナ。
自ら死を選ぼうとしていた黒江を引き留めるため、慎は彼女と一緒に映画を見る。
エピソードごとにいろいろな作品が取り上げられ、前後に様々な体験をしたり、感想を言い合ったりするうちに二人の関係が深まっていきます。
作中に登場する映画は最後の『番外』にまとめられていますが、私自身、観たものとそうでないものがありました。
主人公の解説や、観たあとのヒロインの心の動き、行動の描き方が大変よく、一度観た映画はもう一度、未鑑賞のものなら今すぐ観たくなります!
二人のべたべたしすぎない距離感も好感が持てます。
また、大人はあまり登場しないのですが、主人公のお母さんのおおらかさには安堵しました。一方、私にも娘がいるので、娘とすれ違ってしまった黒江の母親の気持ちも多少は分かる。
『大人なら何でもできると思っているうちは、まだまだ子供』というのが私の持論ですが、主人公たちぐらいの年齢はまさに大人と子供の過渡期。
映画や進路、親たちの関係などを通して、主人公たちが成長する様に爽やかな感動を覚えました。

人より詳しい分野(今回は映画)があるのは創作者にとって何よりの強みであると思います。その分野の魅力を十分に伝える筆力を、文章からひしひしと感じました。
青春小説としての完成度も素晴らしく、読んだあと、いつまでも心地よさが残る一作です!!

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