第13話 013 - やろう!、ぶっころしてやるぁ! -

013 - やろう!、ぶっころしてやるぁ! -



「・・・それでね、今日から死体を集める事になったんだぁ」


「えぇ・・・それ危なくないの?」


「大丈夫だよ、しばらく遊んで暮らせるくらい報酬が良いし!」


「でも・・・全然知らないおじさんなんでしょ、換金した後で居なくなったり、エルちゃんが襲われたり・・・」


「見た感じいい人っぽいんだけどなぁ、ニートも一緒に居るから大丈夫だと思う」


「ニートって船の操舵サポートシステムだよね、私は話したこと無かったけど確か壊れたって言ってなかった?」


「うん、レベルスおじさんが修理してくれたの」


「・・・あ、もうお仕事に行く時間だ・・・それじゃぁ作業気をつけてね」


「うん、リンちゃんもお仕事頑張って」


ピッ・・・通話終了、回線を切断します。


朝早く、おしっこがしたくなってシャワールームに行ったらおじさんが全裸でシーツを洗濯してるところに遭遇、我慢していたおしっこを漏らした後、僕はリンちゃんと久しぶりに通話していました・・・もちろん防護服の中は洗浄済み。


ニートとの旅が楽しくて連絡がいつもより遅くなったから、リンちゃんは僕に何かあったんじゃないかと心配していたようです。


「さて、予定より早起きしたからまだ時間があるね」


「なぁ、シエル」


「何?、ニート」


「あいつ・・・リンの奴は今もローゼリアのステーションに住んでるんだろ、何でお前と揃いの防護服着てるんだ?」


「・・・リンちゃんは僕がこんな身体になったのは自分のせいだって思っててね」


「実際そうじゃねぇか」


「まぁ、そうなんだけど僕が宿主になってすぐの頃は防護服や首輪が嫌でずっと泣いてたの、外に出るのも恥ずかしくて引きこもってた、それを見たリンちゃんが「私も同じ姿になる、2人一緒なら他人の目があってもそんなに恥ずかしくないでしょ」って・・・自分の持ってたお洋服を全部捨てちゃって・・・」


「防護服は凄ぇ高いよな、普通はそう簡単に買えねぇぜ」


「リンちゃんの両親に借金して買ったらしいよ、今もお給料のほとんどを使って返済してるみたい」


「10日超えて着続けてたら皮膚障害が出て脱げなくなるだろ、そんな理由で一生あの姿で過ごす選択したのかよ、バカじゃねぇの?」


「定期的に皮膚を外気に晒して中和剤で身体を洗ってると思う、だから僕と違って脱ごうと思えばいつでも脱げるよ」


「そうなのか?」


「うん、リンちゃんの性格からすると多分そうじゃないかなぁ、もしかしたら着たままなのかもしれないけど・・・あの子は自分が傷付く事はしないし心も弱いの、まぁそれも含めて僕はリンちゃんが大好きなんだよ・・・」


「本人には聞いてねぇのかよ?」


「実は詳しく聞いてないの、事前に相談してくれてたら僕だって止めてるよ、でも突然「どう似合う?これから私もこの格好で過ごすから」って・・・防護服のお金も払った後だったしリンちゃんは僕の事で精神的に参ってたみたいだから、そうする事でリンちゃんの気が済むのなら・・・って感じかなぁ」


「俺様は機械だからお前達の気持ちは理解できねぇな、自分本位で自己満足・・・そんな奴は信用できねぇ」


「2人は性格が合わないと思って最初から紹介しなかったんだよ、そうしてるうちにニート壊れちゃったし・・・」


「・・・」


「・・・っ、ニートごめん、今幼虫に体液を注入されたみたい、もうすぐ身体の中で動き始めると思う」









俺はベネット・ライアス、死にかけてた所をシエルに助けられ船に乗せてもらっている。


あの後俺は予備のシーツをもらって寝室に引き返した、今日は賞金首の死体拾いだがまだ時間が早いからベッドに寝転がってのんびりしてる。


ピッ・・・


ぷしゅー


どすどす・・・


「嫌だぁ!、痛いよぉ!」


痛いと泣き叫んでるシエルを抱えてニートって呼ばれてるクソ野郎が寝室に入って来た・・・。


「うぉ!・・・っ!、痛ぇ!」


ごろごろっ・・・


あのクソ野郎、今度は何だよ!、片手でシエルを抱えたまま俺の頭を掴んでベッドから引き摺り下ろしやがった!。


「あぁぁん!、やだ、出て来ないで!、いやぁぁ!」


ベッドに寝かされたシエルの奴は腹と股間を押さえて泣き叫んでる、苦しみ方が尋常じゃねぇぞ・・・そう思ってるとパワードスーツを着たクソ野郎が俺の方を見た。


がしっ!


ずるずる・・・


俺の片足を掴んで寝室の外に引き摺り出そうとしてる、俺は今まで寝てたからシーツを巻いてねぇし全裸だぞ!。


「おい!、待てよ!、何しやがる放せ!」


ピッ・・・管制室、扉を開きます。


ずるずる・・・


俺は奴に引き摺られて管制室に入った。


どっ!


ごろごろっ


こいつ信じられねぇ!、俺を蹴りやがったぞ、痛ぇ!。


「何しやがる!、もう許さねぇ・・・」


そう叫んで立ちあがろうとした俺は周りを見て愕然とした・・・船の間取りは既視感があったがそんな事はありえねぇし偶然だと思ってた、だがこの管制室の様子と操縦席は見覚えがある。


「よぉ、久しぶりだなベネット、相変わらず間抜けなツラしてるじゃねぇか」


操縦席のスピーカーから聞き覚えのある口調・・・そうだ、あのエロ動画で聞こえてた声と同じ、俺はこいつを知っている。


「まさか・・・お前、ジュノーか?」


「やっと気付いたか、その通り、俺様はジュノーだ、今はニートって名乗ってるがな」


「・・・っ、まさかこのパワードスーツ操作してるのもお前じゃねぇだろうな!」


「そうだと言ったらどうするよ」


「散々舐めた真似しやがって・・・野郎!、ぶっ殺してやるぁ!」


どん!


「ぐぇっ!」


パワードスーツが信じられねぇ速さで動いて俺を組み伏せやがった、動けねぇ!。


「畜生、放せ!」


「まぁ落ち着けよ、これから死体拾いするんだろ、もう偵察機を外に出して船に向かわせてるぜ、賞金首の名前を教えろ」


「待て!、その前にシエルの奴は大丈夫なのかよ、凄ぇ苦しんでたぜ、それに俺の服を返しやがれ!」


「服より先にシエルの心配したのは褒めてやろう、定期的に忌々しい幼虫が身体の中で暴れるんだ、しばらくしたら落ち着くだろうよ」


「俺の服は何処だよ、返しやがれ!」


「あぁ、あのボロ布か?、臭ぇし汚かったから捨てた」


「何だって!」


「ポケットに入ってた財布とハンター身分証は取っておいてやったぜ、感謝しやがれ」


ぽんっ・・・


そう言ってパワードスーツが操縦席の後ろに置いてあった俺の財布と身分証を投げて寄越した。


「ふざけやがって財布の中身が無ぇ!」


財布の中に結構入ってた筈の現金が空になってやがる!。


「命を助けてやった礼として俺様が貰ってやった、ありがたく思え」


「仕方ねぇか・・・カード類は無事だな・・・まさかお前、俺の口座に手をつけてねぇだろうな!」


「俺様もそこまで外道じゃねぇから安心しろ、まぁ・・・お前の生体データが手に入ったからいつでも引き出せるようにはしてあるがな」


「できるのかよ!」


「俺様に不可能はねぇぜ」


俺は拠点に戻ったら口座を移し替えようと心に決めた、すぐにでも手続きしてぇがここの端末使ったら奴に情報が丸見えだろう、信用ならねぇ!。


「まぁ、お前も死にかけて酷い目に遭ったんだ、これ以上おちょくるのは可哀想だな、あの箱の中を見ろ」


そう言って奴は部屋の奥を指差した、箱の中を見ると俺のズボンとブーツ、それから穴だらけの上着が綺麗に洗濯して入ってやがった!。


「ズボンとブーツの回収費用と服の洗濯代は別途請求するからな」


「おい!、回収だと!、俺がズボンが脱げたから待てって言ってるのにお前が船から無理やり引きずり出したせいだろうが!・・・ってか俺だと知ってて今まで雑に扱ってたな!」


「相変わらず細かい奴だなベネット、そんなだから女にモテねぇんだ」


「それは関係ねぇだろ!、余計なお世話だ!」


「そう怒るなよベネット、久しぶりに話せて嬉しいぜ」







「・・・という訳で、シエルは俺様が目覚めるまでずっと一人でハンターの仕事をしてやがった」


「シエルが・・・ノルドとマリアの娘・・・それに兄貴がこの船を改修したのかよ、新品みてぇじゃねぇか」


「おうよ、エッシャーのクソ野郎も元気そうだったぜ、お前は会ってるのか?」


「いや・・・そういえば300年以上会ってねぇな・・・ってか見つかると仕事手伝えってうるせぇから逃げ回ってんだ・・・それよりあの2人は娘を放ってどこで何やってんだよ?」


「エッシャーには言ってなかったが・・・実は「向こう」で色々と問題があって帰ってる、俺様とシエルは留守番してたんだが・・・」


「お前がぶっ壊れたってか?、かつて星団中を恐怖に陥れた凶獣が情けねぇな」


「虫が魔法陣の基盤を喰い荒らしやがったんだよ!、シエルは修理屋に見せて直そうとしたらしいがお手上げだったようだ、意識が完全に落ちてたから俺様の「本体」をこの星団に連れて来る事も出来なかったぜ・・・」


「おいそれだけはやめろ!、大惨事になるぞ!、それに魔導回路はこっちの星団じゃ未知の技術だ、下手に中を見せて核・・・魔石を盗まれてたらヤバかっただろう?」


「幸い素人に毛が生えたみてぇな技術者だったようだ、魔導回路まで到達できずに電源の問題だろうって言われたらしい」


ピッ・・・


ぷしゅー


「おじさんごめんなさい、僕に寄生してる幼虫が暴れたの・・・ベッドのシーツは新しいのに替えておいたから」


ジュノーと話してるとシエルの奴が管制室に入ってきた、・・・顔が赤く上気して目は涙で潤んでる、息も荒いし髪が乱れて凄ぇ色っぽいぞ!、ズボン履いててよかったぜ。


「おいベネット、俺様のシエルをエロい目で見るな」


「見てねぇよ!」


「あれ、おじさんとニート、仲良くなってる?」


「なっ・・・仲良くねぇ!」


「仲良くなんてねぇぞシエル!」








「6号と12号偵察機の巡洋艦には居なかったか、なら残りは・・・」


「8号機だな、あの船は原型留めてるし船底に生き残りが3人・・・いや、今一人死んだから生きてるのが2人居るぜ、他の部屋の生命維持が止まって閉じ込められてるみてぇだな、どうするよ?」


「生きて捕まえりゃ追加で特別報酬が出るが・・・俺をこんな目に遭わせやがったんだ、扉こじ開けて死んでもらうのもいいかもな」


「えぇ・・・殺しちゃうの?・・・」


「殺そうぜ、生きてる奴をこの船に乗せたくねぇしな、俺様に乗っていいのは知り合いか死体だけだ」


あれから半日が経った、死体拾いは順調に進んでる、今日だけで賞金首の死体が18体手に入ったし高価な部品や貴金属も予想以上に回収できてる、おそらく何処かの船を襲った帰りの連中も居たんだろう。


死体はこの船の第2荷物室の温度を下げて冷凍してる、だが生存者が居たら面倒な事になるな、この船に乗せる訳にはいかねぇ、大破した船ごと牽引して行くか・・・。


俺はモニターで作業状況を眺めながらシエルが管制室に来る前、ジュノーと話した事について考えてる。


「シエルはまだ駆け出しでハンターの仕事は荷物運びしかしてねぇから金に困ってる、しばらく一緒にこの船で賞金稼ぎでもしてハンターとしての振る舞いや戦い方を教えてやってくれ、お前は俺様にいくつも借りがあるし今回も命を助けてやったんだぜ、協力しろ」


・・・成人してるとはいえ俺に言わせればシエルはまだガキだ、ハンターとしても素人同然・・・宿主にされてからハンターギルドとは遠隔通信で依頼を受けていたらしい。


ジュノーの奴はステーションや惑星にあるハンターギルドの中まで一緒について来れねぇから俺が手取り足取り教えてやれって事だろうな・・・。


面倒だ・・・とてつもなく面倒で厄介な依頼だ、だがシエルはあの2人の娘だし性格は単純、誰か悪い奴に騙されねぇか心配だ・・・このまま放っておくわけにもいかねぇだろう・・・。


普通のギルドには宿主のシエルは連れて行けねぇ、少し・・・いやかなり治安が悪ぃが死体の換金はあそこでするしかねぇか・・・。


「だが・・・無理に危ねぇハンターなんてしなくてもあいつを頼ればいいじゃねぇか・・・」


「え?、おじさん何か言った?」


「いや、なんでもねぇ」













近況ノートにイラストを投稿しています。


リンちゃん(宇宙服)

https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16818093091595978396


リンちゃん(宇宙服+白衣+ブーツ)https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/16818093091596021326

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜 柚亜紫翼 @hkh

現在ギフトを贈ることはできません

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ