第11話 011 - なくほどこわいのかよ -

011 - なくほどこわいのかよ -



俺の名前はベネット・ライアスだ。


ちょっと前まで大破した自分の船の中で死にかけてた、だが突然何かがぶつかる音がして俺は目を覚ました・・・何があった?、気絶してそれほど時間は経ってねぇ筈だ。


ばきばきっ!


がこん!


ぬっ・・・


「何だよ!」


俺の座ってる操縦席の真横・・・緊急避難用の脱出口に鋭い爪みたいなのが突き刺さって扉ごと剥がされ、見た事も無ぇ凶悪なパワードスーツを着た奴が入って来やがった。


扉の外は宇宙空間だよな・・・だが今も俺は普通に呼吸が出来てる、恐らく他の船が横付けしてここの扉と繋げたんだろう、つまり俺を救助に来たって事か?。


「待ってくれ、足が挟まって抜けねぇんだ・・・」


パワードスーツの野郎は俺が話しかけても返事が無ぇ、言葉が通じてないのか?。


めきっ・・・がこっ・・・ばきばきっ!・・・


「うぉ!、痛ぇ!」


俺の両足が挟まってるコントロールパネルを掴んだかと思うと強引に引き剥がしやがった、見た目通りの脳筋野郎だなおい!。


奴は俺の着てるジャケットの首元を掴んで座席から引き摺り出そうとしてる、待て待て!、パネルに引っかかってブーツの片方とズボンが脱げた!、もうちっと優しく出来ねぇのかよ!。


・・・話は変わるが俺は下着を履かない派だ、つまりズボンが脱げたら下はすっぽんぽんのフルチン状態・・・それなのにこのクソ野郎は俺を引き摺って横付けした船に連れて行こうとしてる。


「ちょっと待ってくれ、ズボンが脱げたから回収させてくれよ!」


ずるずる・・・


「おいふざけんな!、聞こえねぇのか!・・・ぐぇっ!」


どさっ・・・ごろごろっ・・・


「ぐぉぉ、痛ってぇ!・・・げふっ!ごふっ!」


信じられねぇ事に奴は俺を隣の船の荷物室?に放り投げやがったぞ!、俺は大怪我してんだ死んだらどうすんだよ!、今のでまた吐血したじゃねぇか。


ぷしゅぅぅ・・・がこん!


ピッ・・・荷物室の扉を封鎖、搬入通路切り離しました。


「おいやめろ!、うぉぉぉ、俺のズボン!」


奴は荷物室の扉を閉めて俺が乗ってた船を切り離した!、船内の音声アナウンスはエテルナ星系周辺で広く話されてる公用言語だ、それなら俺の言葉通じてるだろ、ふざけやがって。


ずるずる・・・


奴はまた俺を引き摺って荷物室の出口に向かってる、俺は怪我して血まみれなんだ、もっと怪我人に対して扱い方があるだろうが!。


ピッ・・・荷物室空気圧チェック、正常、扉を開きます。


ぷしゅー


「・・・んっ、あぁん!、嫌っ・・・いやぁぁ!」


扉が開いたら女の喘ぎ声が聞こえて来たぞ!、俺がこんな目に遭ってるのにこの船の奴等はお楽しみの最中かよ!。


荷物室の向かいの扉が開いてて声はその中から聞こえるな、俺は奴に引き摺られながら部屋の中を覗き見た、やってる最中なら裸だろう、ちょっとくらい見てもいいよな。


「はぁっ・・・はぁっ・・・あん!・・・あぁん!、気持ちいいの!」


「・・・」


まだ10代前半くらいの宇宙服を着た・・・いや、首輪をしてるからベンダルの宿主・・・防護服か、それを着たガキが自慰してやがった・・・。


・・・俺の好みはガキじゃなくて巨乳の熟女だ。


何故か俺を引き摺ってるクソ野郎も部屋の前で立ち止まって一緒に見てる、もしかして部屋の中覗いてる俺に配慮してんのか?、配慮ならズボンの時にしやがれ!。


「すまねぇ・・・ガキに興味は無ぇんだ」


ずるずる・・・


それを聞いて奴はまた歩き出した、やっぱり俺の言葉通じてんじゃねぇか!。








ぽたっ・・・ぽたっ・・・


あれから俺はクソ野郎に全裸に剥かれてシャワー室で丸洗いされた、洗剤は傷が沁みるから待てって言ってんのに完全無視だ。


洗い終わると俺が着てた服を持ってどっかに行きやがったぞ、今俺は全裸で放置されてる・・・自分でできるって言ってんのにケツの穴まで洗われたぜ、しかも使ってる道具は便所の掃除用っぽい、尻がクソ痛ぇ・・・覚えてろよ、あいつだけは許さねぇ!。


また眠くなって来やがった・・・片足は折れてるし割れた計器の破片で全身切り傷だらけだ、血が減り過ぎて頭が回らねぇ・・・。


「今使ったら気絶しちまうかもな・・・だが内臓だけは早く何とかしねぇとやばい」


俺は腹に手を当てて・・・を巡らせた、手元が光って痛みがちょっとマシになったか・・・やばい・・・意識が・・・。




・・・


がたっ・・・


ふきふき・・・


気絶してた俺は人の気配と物音で目を覚ました、俺は腐っても金級のハンターだ、素性の分からねぇ船に乗せられて呑気に長時間気絶するほど頭お花畑じゃねぇ。


倒れてる俺の頭の上あたりに誰か居る・・・ちなみに俺はさっきクソ野郎に丸洗いされた時のまま・・・全裸だ!。


まだ首も痛ぇが体を捻って気配のする方を見た。


そこには尻があった。


「尻だ」


思わず声が出ちまったぜ。


さわっ・・・


「ひぃっ!」


がたっ!・・・ごん!


「あぁぁぁぁ!」


思わず手が動いて尻を撫でていた・・・俺も男だ、目の前に女の尻があれば撫でる。


こいつはさっき部屋で自慰してたガキだ、尻を触られ慌てて立ちあがろうとしたら思いっきりこけた、今は洗浄機の角にぶつけた頭を抱えて悶絶してやがる・・・痛そうだ。


隣にはバケツと雑巾、ここに来る途中で床や通路を汚した俺の血は拭き取られて綺麗になってる、どうやらこのガキは床を掃除していたようだ、頭の片隅で悪い事しちまったなって思ったが俺が酷ぇ目に遭ってる時に呑気に自慰してやがった罰だ、ザマァみろ。


俺は身体を起こして部屋の中を見回した、転がされてるのはシャワー室だ、その向かいには便器が見える、付いてる設備はまだ新しくて高そうだな・・・こいつ金持ちなのか?・・・。


おいちょっと待てよ、便器の横にさっき俺の尻を洗ってた棒付きのブラシが置いてあるぞ!、やっぱりあれは便所の掃除用じゃねぇか!。


便器の隣には洗浄機がある、こいつは宇宙服を着たままで用を足せて便利だから俺も船に付けてるがえらく高そうな機種だ、このガキの場合は宿主で防護服を強制的に着せられてるだろうから必須だよな。


「ぐすっ・・・ひっく・・・痛い・・・」


そう言いながら頭を押さえて泣いてるガキがこっちを向いた・・・視線は俺のナニに釘付けだ、そんなに見るなよ照れるじゃねぇか。


「わぁ・・・わぁぁん怖いよぉ!」


ガキが震えて泣き出した、おいちょっと待て!、俺のアレは泣くほど怖いのかよ!。







「・・・」


あれから俺たちはお互い自己紹介した。


奴の名前はシエルというらしい、俺からちょっと離れたところ・・・洗浄機の隅に座って涙目だ、ちなみに俺は相変わらず全裸だ、俺の服どこいった?。


「・・・助けてくれて感謝するぜ、おかげで命拾いした」


「うん、気にしないで・・・凄く血が出てたけど大丈夫?・・・じゃないよね、応急処置をして近くのステーションに送るからそこで治療を・・・」


「待て!、治療は後だ、この残骸の中に凄ぇ賞金首が居るんだ、呑気にステーションで治療してたら他の奴に取られちまう・・・そこで頼みがあるんだが賞金首の奴と・・・他にも何人か賞金かかってるのが居ると思うが、そいつらの死体や金目のものを回収したい」


「えぇ・・・でもおじさん重症・・・」


「手伝ってくれたら賞金を分けてやる、そうだな・・・俺が7でお前が3だ、それでも宇宙船が何隻か買えるくらいの額になると思うぜ」


「え・・・そんなに?」


「俺の方も船が全壊して大損したから半分って訳にはいかねぇが、でかい臨時収入って事で協力してくれよ」


「・・・うん、いいよ・・・とりあえず疲れてるだろうから僕のベッドで悪いんだけどそこで少し休んでね、寝室までニートに運んでもらおうかな・・・それからお腹空いてるでしょ、食べ物も持って来るから」


ほぅ・・・こいつは自分の事を僕って言うのか、喋り方も中性的だな、見た目は女だがまさか男?・・・男の宿主は欲情を激らせて他人を襲わねぇように竿や玉を切り取られてるから股間の膨らみじゃ判別できねぇ・・・。


・・・胸は貧相だ、無いと言ってもいい、こいつくらいの年齢ならもうちっと膨らんでてもいい筈なんだがな、髪の長い男に見えなくもねぇ・・・だが尻の形からすると女だろう、顔はえらく整ってるから眼帯してなきゃ普通に美少女だな。


俺は改めてシエルと名乗るガキを観察した、耳が少し尖ってる・・・長命種か、髪に隠れてたから気付かなかったぜ、13歳くらいだと思ってたが100歳超えてる感じだな。


ベンダルワームの宿主って事を証明する星団の刻印入りの首輪と手枷、足が悪いのか杖を持って左足を引き摺ってる、濃いグレーと銀が混ざった長髪で目は青に近いグレー、左目には眼帯・・・額から頬にかけて傷がある。


ベンダルワームって奴は卵を産み付けた相手に自分の物だって印を付ける習性があるから顔の傷は多分そいつにやられたんだろう、可哀想に。


「・・・なぁ、一つ聞いていいか?」


俺はシエルに聞いた。


「うん、いいけど」


「お前は男か?」


「女だよ!、見ればわかるでしょ!」


「分かんねぇから聞いてんだ」


「わーん!」


シエルは女だった、それにしても無防備な奴だぜ、今日会ったばかりの男を簡単に信用して・・・もし俺が悪党だったらどうすんだよ、まぁ、こいつの他にあのクソ野郎も船に居るだろうから俺が心配する事でもねぇか。







シエルがシャワー室から出て行ってしばらくするとあのクソ野郎が来やがった、今度は俺の髪を掴んで引き摺ろうとしてたから抵抗したら抱き抱えられた・・・いわゆるお姫様抱っこって奴だぜ畜生!。


俺はクソ野郎に寝室に連れて行かれてベッドに寝かされた・・・っていうか放り投げやがったぞ!、あいつ俺に何か恨みでもあるのかよ!。


ベッドからは仄かな汗の匂いに混ざってやたらといい香りがした、シエルの匂いだろう、俺は断じて幼女に欲情する趣味は無ぇが思わずシーツに顔を埋めて深呼吸した。


それからシエルは俺の折れた足や全身の傷に応急処置をして栄養剤と携帯食を持って来てくれた、俺がベッドを使ってるから管制室で寝るそうだ、あのクソ野郎と違って良い子だよな・・・ってかあの二人はどういう関係なんだ?。


自由に使って良いと言われたから俺はベッド脇にある端末で星団管理局に連絡を入れた、通りかかった船に無事救助されたから救難要請をキャンセル・・・そうしねぇと他の船がここに来ちまう、賞金首を横取りされたら堪らねぇ。


「足はしばらく歩けそうにねぇな、潰れてた内臓はあと5回くらいアレをやるとして10日もあればいけるだろ・・・傷は放っておいてもそのうち治る・・・」


明日からシエルに協力して貰って賞金首の回収だ・・・今日は何度か気絶してたからまだ眠くならねぇし・・・暇潰しに端末で映画でも観るか、面白そうなやつがあればいいんだがな・・・。


「何だこりゃ・・・」


端末の中を見てたら怪しいタイトルが付けられた動画があった。


「首輪幼女シエルの着衣拘束実況プレイ第一集、同じく第二集、第三集・・・総集編までありやがるぞ、閲覧は管理者限定?・・・おっ、この端末管理者権限あるじゃねぇか」


俺は動画を再生した。

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