第4話 魔人と戦争

 交渉の様子は、カイトたちにはわからなかった。


 互いの国王の周りには厳選された数十名の騎士だけ。


 しかし、なにやら交渉は白熱しているようだ。


 魔人の騎士が剣を抜いて構え、人間側の騎士も同じようにした。


 しばらくの緊張。


 騎士同士が、剣をぶつけ合った。


 同時に互いの国王が退く。


 誰かの声が草原に響く。


「戦争だああああ!」


 その声を聞いて、互いの戦士たちが動き始める。


 交戦。


 人間側で最初に飛び出したのは、オーウェンだった。


 同時に魔人側の一人目も飛び出す。


 二人が剣を交える。実力は互角。


 二人は互いに剣を交えながら、横へ横へと逸れていく。


 それに続いて、こちらの金級戦士たちも飛び出し、銀、銅、鉄……と続く。


 カイトも鉄級戦士たちに続いて前線へ向かう。


 ぶつかる敵はみな、双頭竜時代のカイトなら最初の一撃で複数体まとめて沈むような雑魚ばかり。


 しかし、時間をかけじっくりと彼らと対峙する。


 なぜなら、今のカイトは石級戦士だから。


 適当に敵と対峙していると、すさまじい速度でどこかへ逸れていったオーウェンたちが、再び姿を現す。


 左目の眼帯をほどいて魔眼を発動する。


 能力を発動させると、白目の部分が黒く、黒目の部分が金の魔眼が、光を放つ。


 魔眼の能力で、目視できる範囲を広げて戦闘の様子を確認する。先程までは互角だったが、今はオーウェンが少し押されている。


「はあ……」


 溜息を吐くと同時に地面を蹴り一瞬で長距離を移動、オーウェンに直撃しかけた剣とオーウェンの間に割り込む。


 そのまま魔人の剣を弾き返し、地面を蹴って肉薄。


 斬。


 さすがに見え見えで、防がれる。


 一撃防いでごく一瞬安堵した魔人を、オーウェンが切り裂いた。


「カイト、助かった」

「あのとき、一人でリアを助けに行っていたら、俺はあそこで死んでいただろう」


 それを止めたのはオーウェンだ、と心の中だけで呟く。


 だが、それは理解していたようで、オーウェンは一瞬だけ口元を緩めて、すぐ戦いの最前線へ跳んだ。


 カイトは、前線に出すぎてしまったと反省し、後方に下がる。


 人間側の陣営を見れば、騎士たちがいるところに突っ込む影が一つ。


 カイトは気になってその影を追う。


 人間側の最後方では、圧倒的な個の力により国王の正面を守る騎士たちが殺害されていた――

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