第6話 魔王の元へ

 国王は魔人たちにとっては狙い目らしく、常に狙われ続けている。


 時には魔法攻撃、時には直接攻撃。


 そのすべてを、カイトは単騎で退ける。


 魔人は、完全にカイトを警戒して、国王への攻撃を諦めた。


「カイト。このまま、魔王を討ち取ることはできそうか?」


 国王はカイトに問いかける。


 魔王は、戦闘力こそ普通の上位魔人程度だが、その存在は魔王国にとっては極めて大きなもので、それを討ち取ることができれば大きな収穫になる。


「オーウェンと協力すれば。しかし、国王の護衛は」

「私の跡継ぎは既にかなり成長している。そんなことよりも、魔王を討ち取ることの方が重要だ」


 カイトはうなずいた。


 戦闘中のオーウェンに駆け寄る。


「オーウェン。国王から指示が出ている」

「なんだ?」

「魔王を、討ち取れと」


 オーウェンは浅くうなずいて目の前の魔人を瞬殺すると、身体の向きを変えた。


 次々と立ちふさがる上位魔人を、戦闘力の暴力で突破する。


「魔王との戦いが長期戦になると、国王が討たれるリスクが高まる。早期決着を狙いたい。できれば一撃」


 国王が討たれるリスクだけでなく、オーウェンが抜けたことによって戦線が崩壊する可能性もある。


「待ってくれ、魔王も戦闘力が高くないとはいえ、上位魔人だ。一撃で殺すというのは――」

「大丈夫だ」


 普通なら魔王で殺すことは不可能。


 それはカイトであっても同じこと。ただ剣で斬るだけではどうやっても魔王を一撃では殺せない。魔法でも然り。


 しかし、カイトの故郷に伝わる魔導書の最後のページに、魔法の究極系が載っている。


 その魔法は、必殺の魔法。


 その代償に、魔力の消費も大きく、溜めも長く、持続時間も短く、効果範囲も狭い。


 だがその魔力の流れを視認し操作することで、カイトは魔法を剣にまとわせることに成功していた。


「だから、道を開いてくれ」


 戦況にはまだ余裕がある。一撃決め損なっても敗北が決定するわけではない。


「やってやる。俺は遠距離攻撃できねえから、すぐ後ろについてこい」


 オーウェンは剣を構える。


 前に進みながらの怒涛の連撃に、魔人たちは一時的に道を開ける。


 カイトは、その後ろを走りながら魔法を用意する。


 一本道の先に見えるのは、魔王。


 魔王の前までたどり着いた瞬間、カイトは冷や汗を流す。


 まだ、魔法の用意ができていない。


 魔王が手に持つ剣を一閃。


 これまでの上位魔人とさほど変わらない速さながら、魔法の用意に集中していて、対応するリソースが足りない――

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能ある鷹は爪を隠す ナナシリア @nanasi20090127

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