第11話 母の考え方
そもそも、なぜ私の母は私が欲しがる物をことごとく買ってくれないのか。
どうしてそこまで節約に走ってしまうのか…。
実は母も子供の頃はとても貧乏で、クラスメイトが持っている物と同等な物を買ってもらえなかったのだそうです。
私としては“自分が子供の頃に満足に物を買ってもらえず惨めな思いをしたのだから娘には自分と同じ思いをさせたくない。”と思ってくれれば良いのに…と思うのですが、母の考え方はそうではありませんでした。
母の考え方は、“あんた達はお母さんが子供の頃よりちゃんと物を買ってもらえるのだから幸せだよ!”というものです。
つまり、私の同級生達と比べて“買ってもらえなくて可哀想”と思うのではなく、母自身の子供の頃と比べて“あんた達はちゃんと物を買ってもらえている”と言うのです。
もちろん、私が子供の頃と母が子供の頃とでは時代が違いますので、母が子供の頃と比べられても困ってしまいます…。
母の言い分としては、「お母さんの時はランドセルなんて買ってもらえず、ビニール袋に入れて持って行ってた。あんたはランドセルがあるんだから幸せだ。」とか「お母さんが子供の頃は教科書も兄姉のお下がりを使っていた。お母さんが使う時にはすでにボロボロになっていた。あんた達はちゃんと教科書を買ってもらえているんだから幸せだ。」等々…。
もはや次元が全然違うレベルの比較をされてしまうのです。
今の私なら「時代が全然違うでしょ!」と反論できますが、子供の頃は母の言い分に言いくるめられていました。
こんな母ですので、私がいくら「友達と違って惨めな思いをしている。」と訴えても聞き入れてもらう事など到底できなかったのです。
また、当時はインターネットが無い時代ですし、母は人付き合いも嫌っていてママ友を敢えて作らずにいたため、私と同年代の子供がどれだけキチンと必要な物を買ってもらえているのかを母は全く知らなかったのです。
母はいつまでもいつまでも、自身が子供だった戦後の時代と私達姉妹を比べ続けていたのでした。
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