第8話 見栄を張る両親(後編)

後編は父親が張ろうとした見栄です。


私が5歳か6歳くらいの頃に父方の親戚の結婚式に行き、その式の中で私は演出のお手伝いをやりました。


どんなお手伝いかははっきり覚えていませんが、何かを持って花嫁さんと歩いた記憶があります。


そのお手伝いが無事終了し、姉も式の中でピアノを演奏するという大役を済ませました。


そして結婚式が終わった頃、私はお手伝いした事のお礼を言われ、その時にプレゼントを貰いました。


包装を解いて中を見ると、オルゴール式のお人形が入っていました。


私はお手伝いしたご褒美だと思いとても喜んでいたのですが、その一部始終を見ていた父が私に向かい「それ、あの子にあげなさい。」と言ってきました。


父が指差したのは、かなり小さなお子様…。


しかし私は父の指示を理解できずに戸惑っていました。


その時点では、“このプレゼントはお手伝いをしたご褒美”だと思っていたため、なぜ他所の子供に譲らなければならないのか納得できなかったのです。


私は“このままではこのお人形を他所の子に取られてしまう”と思い無言で戸惑っていました。


すると、先ほどプレゼントをくれた女性がその小さな子供にもプレゼントを持っていき、手渡して行ったのです。


その子がプレゼントを開けると、私と同じタイプのお人形が入っていました。


どうやらそのプレゼントは、会場に来た子供全員分が用意されているようでした。


もちろんピアノの演奏をした姉にもプレゼントは渡されました。


私はその様子を見て、自分のお人形が他所の子供に奪われる事はなくなったと思い安心しました。


こちらの件も、父が“ウチの子供は自分よりも小さい子に物を譲る事ができる良い子なんです。”と周りに居る親戚等にアピールをしたかったのだと思います。


私自身の気持ちとしては全然譲りたくなかったので、完全に父の『見栄』です。


滅多におもちゃの買ってくれないくせに、なぜこのような見栄を張りたがるのか…。


不思議で仕方ありません。

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