第7話 見栄を張る両親(前編)
今回は子供の頃のおもちゃ事情について書きます。
学校で必要な物でさえケチる親ですので、もちろんおもちゃもあまり買ってもらえませんでした。
うちの暗黙のルールとして『クリスマスと誕生日以外はおもちゃを買わない』というのがありました。
親におもちゃを買ってもらうチャンスは年に2度。
それ以外の普通の時におもちゃが欲しくて「買ってほしい。」と言っても叶う事はありません。
ですのでクリスマスと誕生日以外に欲しいおもちゃが出現したら、お年玉を使うしかありません。
(お年玉も母に「子供にこんな大金持たせられない。」と言われて殆ど没収されてしまうので、手元に残るのは5千円程度なんですけどね…。母はお金を没収する際「将来、大学に通う時の学費にあてる。」と言っていました…………………。)
そんな訳で私がおもちゃを手に入れるチャンスは極限られていたのですが、時々予想外の展開により親以外からおもちゃをいただけるチャンスというのが発生する事があります。
うちの親はそういった場面で、ここぞとばかりに見栄を張ろうとするのです。
例えば、母と外食をしている時に、たまたまそのお店で子供向けの抽選会をやっている事があり、私もその抽選でくじを引く事になったのですが、母が私に「もし1等が当たったら、あの子にあげなさいよ!」と言ってきたのです。
母が言う『あの子』とは、たまたま同じお店にお客さんとして来ている見ず知らずの子供。
私よりも小さい子供でした。
母は、もし私が1等を当てたらその見ず知らずの子供に譲ってやれと言ってきたのです…。
私は「え!?何で!?」と言って困惑していましたが、母はドヤ顔で「いいからそうしなさい!」と言ってくるのです。
その抽選会の1等の賞品はリカちゃん人形のセット。
滅多におもちゃを買ってもらえない私にとっては、おもちゃを手に入れる絶好のチャンスでした。
しかし、母は私からそのチャンスを奪おうとしている…。
私は母が悪魔に見えました。
母は恐らく『うちは普段からおもちゃを沢山買っているので全然必要無い。だから、うちの子供よりも小さい子に譲ってあげるわ♪』という見栄を張りたかったのでしょう。
おもちゃなんて殆ど買ってもらえてないのに…。
幸い、私はその時のくじでハズレを引いたため『見ず知らずの子供におもちゃを譲らなくてはいけない』という事態にはなりませんでしたが、もし私が1等を当ててしまっていたら、母を一生恨む展開になっていた事でしょう。
後編に続く…。
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