「ガール」に「フレンド」がつくだけで、口に出せなくなっていたころ

ガールとガールフレンドの間には、決して飛び越えられない深くて広い深淵が広がっています。幼い男の子(女の子もなんですけど)は「ガールフレンド」の岸辺にまともに目を向けることすらできず、ときにちらちら横目で見ながらも「ガール」と「ボーイ」の楽園生活に満足しています。ちょっと遠出すれば太い頑丈な橋が対岸に架かっていることに気づくまでは。

無慈悲そのものにも見える成長の残酷さにため息をつくよりも、人間の多面性への賛美がむくむくと湧きおこるようなお話です。「きわめて繊細で純情なぼく」は成長しても決して消えるものではなく、その周りに「僕」やら「俺」やら「わたくし」やら「パパ」やら「夫」やら「部長」やらが貝殻の年輪のように沈着していくだけなのですから。いけすかないおいちゃんたちだって、ペリペリ皮をむいていったら、こんなひりひりするような男の子が核になってるのだろうなと思うと、いまの傍若無人ぶりも温かな目で迎え入れることができそうです。

という真面目な話はこのくらいにして、この、きわめて繊細で純情な「ぼく」が中学生になるとアンダーグラウンド・ダンゴムシ・ボーイズ(『文学フリマへの憧れ!』参照のこと)になるのかと、頭がぐわんぐわんするほどの衝撃を受けました。

このお話は『文学フリマへの憧れ!』とセットにしてこそ、ぐっと味わいが深まる気がします。未読の方は、ぜひ、二話セットで、しかも『文学フリマ』を先にお試し下さい。