【14】卵の羽化(前)
この5年間で魔物たちもレーニアも着実に成長していた。
魔物に関しては今では本体が魔物だと見分けられない所か常識のない人間とも思われなくなったようだ。
意味分からんレベルで全員モテまくりのようだ。
実に腹立たしい話である。
ビッ……ナスビに関しては常に男に困ることはないらしいぜ。
最近アイツは肌艶が良くなったって喜んでるらしい。
本当にお盛んなこって……
キアにより発足した傭兵団は着実に精力が……じゃなかった、勢力が大きくなり今では一国を滅ぼすほどの軍事力を誇ってるとか。
というか、そもそもの話をすればアイツらもだけで滅ぼせる力があると思うんだけど。
キアによると魔物はダンジョンに棲む奴と地上に棲む奴がいるらしい。
ダンジョンの魔物は知っての通り、何かしら一定の条件がないとダンジョンの外に出ることは出来ないらしいが、地上の魔物であれば傭兵団に入れて利用することが出来るらしいのだ。
「少しボコって服従させれば簡単に従うよ」
ってマイムが言ってたけど。
可愛い顔して恐ろしい子になったものだ。
シガレット家に今後害を
害を
絶妙に手加減をしながら戦う事も覚えたらしく最近では戦争も飽きており、ただ金を得る手段の1つとしてしか捉えてない。
まぁそりゃそうだよね。
どんなに将軍クラスが出てきても所詮はレベル3とか4だもんね。
雑兵その1程度だもんね。
俺は相変わらずあまり大きな変化もなく生活をしている。
強いて言うならレベルが500になった事ぐらいかな。
あ、大事な事を言うの忘れてた。
5年前に弟が生まれてたんだった。
もう5歳になるんだけどね。
名をエコー・シガレット。
う、うん。言いたいことは分かるよ。
安易だし現代日本の喫煙者なら察してると思う。
やっすい名前つけられたな!って感じだよね。
タバコの事を知らない人は検索してみてね。
今ではタバコの値段が全体的に上がったから、安いって値段ではなくなってるけどね、10年くらい前の値段は本当に安かったの。
ま、まぁアイツの名前の話はいいとして、能力の話をするとだね。
今の所は普通だね。特に突出する点もなければ逆に欠点もさほどない。
多分最終的には母親似のステータスになりそうな予感はする。
どちらかと言うと、武より政治とか知性が伸びそうな予感だね。
さて、最後はお餅姫の話をしよう。
レーニアにはこの5年間の間に30回ほどダンジョンに潜ってもらった。
勿論、俺の補助は前回とさほど変わらない。
現状を簡単に説明するとレベルは42。
勇者の卵は羽化しそうなんだが、今の所何をしても変化がなくなっている。
ちなみにレベルも中々上がらなくなった。
もはや俺を除いた人類では最強の力を持っているにも関わらず勇者スキルが羽化しないってさぁ、いや、じゃー勇者が転生していない時代は人間ってどうやって魔物と戦ってきたのよ。
って単純に思ってしまった。
ちなみに勇者と魔王は転生を繰り返すらしい。
結局のところ、魔王が永遠にこの世から居なくなることはなく、また勇者も同じことが言えるのだ。
簡単に言えば、この世界は勇者と魔王が存在してこそ均衡を保ってると言ってもいいかもしれない。
どうすれば羽化するのか正直全く不明である。
それも当然といえば当然の話しで、お餅姫は”勇者として転生されている”に対して俺は、強い身体で人生を満喫する為に転生されている。
だから俺は勇者の事も魔王の事も何もわからない。
俺のスキルで唯一適合しない物はこの2つである。
というか、スキル一覧の中で勇者と魔王には取り消し線を引かれててスキル無って書かれてある。
何をどう足掻いても覚醒は無いということになる。
今この瞬間まで何とかレーニアをサイ◯人方式で強くしてきたが、ぶっちゃけこっから先はもう分からん。
というのが現状であった。
何かを助ける?守る?失う?
多分そんな事で覚醒するんだと思う。
なので俺はレーニアに1つ提案をした。
それが正解なのかは知らんよ。
「レーニアさぁ王国の戦争に参戦してみたら?国王を説得できなかったら剣術大会とかで優勝して認めさせればいいじゃん」
「戦争!?嫌よ!私は人を殺したくないわ!」
何となく俺はコイツが勇者に慣れない理由が分かった気がした。
「じゃーさぁ魔物を使役している人間が国王の命を狙ってても殺さないの?」
「魔物は殺すわ」
「おまえさぁ脳みそがあまりにもご都合主義じゃねーか?
国王になったり勇者になったりするやつが、そんな甘い考えで何かを守れると思ってんのか?
寧ろ全部失うわ」
「だって……殺したことなんてないし」
「だから行けって言ってるわけ。
多分その甘さが抜けないと、それ、覚醒しないんじゃないのか?」
「あんたは殺せるの?人間を!」
「余裕だけど」
「殺したことあるの!?」
「温室メロンのお前と違って俺は賊に襲われることもあるからな。そりゃー誰でも自分の身の危険になったら殺すでしょ」
「誰が温室メロンよ!あんたさぁ例えば私が人を殺しても嫌いにならない?冷たくしない?」
「あ?いや、そもそもお前の事を好きとか嫌いって目で見たこともないし、そんな感情がないわ。
本音をいうと関わりたくなかったし」
「あんた本当に酷いわね。
ここまで一緒にいるのに」
「それはお前を勇者にするため、お前が頼み込んだからだろ?じゃなきゃ俺は本来別にやる事があるんだよ」
「なんにも教えくれないけど、やることってなんなの?」
「お前には関係のないことだ。
聞いた所でお前は俺に何も出来なければ、咎められる言われもない。
寧ろ知られれば俺は今、憂いを排除するかもしれんぞ?
それでもいいのか?」
別に隠し事なんてないんだけどね。
ただ関わりたくないだけの言い訳なんだけどね。
「わ、分かったわよ。聞かないわ」
「賢い判断だ。もう俺のことは詮索するな。
それよりも自分の状況だけ考えろ。
恐らく4年後に発生する中規模な戦争にお前は参戦しろ。そして参戦できるように全員を納得させる力を示し続けろ」
「それが勇者になる近道ってことね?」
「知らん。
でも今のままじゃ何も変わらんってことだ」
「分かったわ」
「何より人の死に対して耐性を付けとけよ。
戰場でゲロってたらクソダサいしな」
「あんたも出るの?」
「ゲロ?」
「違うわよ!戦争よ!」
「あーそっちか。出ないよ」
「あっそ。でもあんたも出ることになると思うわよ。私が出ることになればね」
「あっそう」
「反応うっす!」
結論から言うと俺は戦争に出ることになるんだが、マイムたちの言ってる事がよく分かった結果だった。
それはまた後程お話しようと思う。
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