【36】やるべきこと①

 俺にはやるべきことがある。

 いま最優先でやるべきことは決まっている。

 フィリックスが玉座に座るのを見届けること

 。即ち息子の成長と妻の安寧が最優先事項だと考えている。

 フィリックスが玉座に座ると言うことは、その時そこにレーニアは居ないのかも知れない。


 もしレーニアが生存しフィリックスに玉座を譲る形になれば、俺的には一番の理想と言えるだろう。

 家族の安寧こそ、人間側の安寧であり王国の栄華とも言える。


 “だから俺は、何度でも魔王の邪魔をする”


 俺の存在意義なんて今の時点では何にも分からない。というのが正直なところで、こんな体に変化してしまったが、それには一切の後悔もない。

 恐らくこの世界で生きていくため、いや、違うな……人間としての身体をとどめたまま何百年も生きるということは不可能である。

 それゆえの進化であり、環境に合わせた変化ともいえるだろう。


 それとなにより奴との再戦をし、必ず勝ち、この世界で生きる意味を聞き出す必要があるというのも、また大きな課題の一つとも言える。


 とりま、今俺がやるべきことの最優先を行うことに、これから数十年の時間を費やそうと思う。

 必要ならダンジョンに潜り、狩りや採取を行いレーニアやフィリックスの為に、それだけの為に俺は生きようと思う。

 邪魔するものは、言葉は悪いが当然皆殺しにする予定だ。

 人も魔物も魔族も平等にね。

 平和主義者や中立者はこの世界において逃げ以外何者でもない。


 存在するのは侵略者と搾取される者しか存在しない。

 しかしながら、この世界にはその上の存在がある。



 “ 超越者 ”



 ありえない力を持ち、この世界の理から反する存在。

 何度も言うがこの世界ではレベルが上がりにくい。

 そのくせ鬼畜的に魔物は強く、相手がスライムでもレベル1でラスボスと戦うくらい無謀な相手である。

 レベルとスキルに全てを支配されているにも関わらず、鬼のように上がらない。


 俺が幼き頃に最強と言われていた剣士の最高レベルが6であった。

 親父のことなんだが、そんな親父もなぜかレベルの低い集団に囲まれて暗殺されてしまった。

 結局のところ、レベルが全ての世界と言いながらも衰えはあるらしい。


 そう考えると低レベルな人間たちはただの絶望じゃないか……

 魔王軍の幹部は弱い現時点でもレベル80だよ。

 マジ絶望じゃん……


 だから俺は今回、強行突破をしたってわけよ。

 最初に話したように、俺にはやるべきことマップが、いくつかある。

 ゆえに俺は今、最愛の息子と遊びながら戦いの指導に勤しんでいるが……


「いだだだだだ!!!

 こら!フィリックス!すねばっかり狙うんじゃねー!

 お父さん痛いです!」


「母上から父上と戦うときは急所だけを狙いなさいと言われました!」


「そうよー!フィリックス、いい太刀筋になってきたじゃない!」


「ありがとうございます!母上!」


 魔王軍を蹂躙して、早5年が経っていた。

 フィリックスも8歳になり俺やレーニアと剣術の指導をするようになった。

 本当は武術の教育係に指名したディゼル将軍へ任せるつもりだったんだけど、ほらフィリックスのさ、急所攻撃の日々に心が折れちゃってさ、結局両親が教えることになったんだよね。


 まったく……ディゼル君の豆腐ぶりには困ったもんだよ。


 最近は俺とレーニアの剣術訓練も頻繁にやってて今ではレーニアもレベルが50になったみたいだ。

 全然足りないけどね。

 最低でも100はないとアイツらに瞬殺される。

 まぁそんな戦いになったらギリギリまで俺が魔王を削るだけなんだけどね。

 若くして勇敢に死ぬよりさ、老いても状況に応じて必要な人間として天寿全うしたほうがいいじゃん?


 だから俺は俺のやるべきことするつもりかな。


 そうそう、言い忘れてた。

 フィリックスに弟が1人と妹が1人生まれました。

 パチパチパチ。


 次男の名前はラスク・ジェンノで5歳。

 長女の名前はラムネ・ジェンノで3歳。


 なぜだか丁度俺が居ない時に産まれてて、名前が決まってるんだけどね、なぜ、駄菓子で統一!?

 もっとあるって!まじで!


 更に付け加えで言うとさ、エコーの所も2人の子宝に恵まれたらしく2人とも男の子。


 長男はラーク・シガレットで2歳。

 次男はココア・シガレットで1歳。


 いや!長男はまだ分かる!長男はね!!

 次男に関してはタバコじゃねーし!駄菓子だし!!

 アホしかおらんのか!この世界の名付けたは!


 ほんで、3人目がお腹の中に居るらしく名前も決まってるらしい。

 男ならコーラ・シガレットで女ならプルーム・シガレットらしい。

 まじで女の子になることを切に願うわ!

 駄菓子シリーズはやめれ!!!


 クソバカどもが!


 まぁでもジョロウ・シガレットなんて付けたら、あのデカ蜘蛛を延髄蹴りしに行くところだったわ。


 これってあれじゃね?

 俺のやるべきリストって、コイツらバカどもに常識的な名前を付けさせる勉強をしなきゃいかん気がするんだが。


 まじでやること多すぎね?この世界……

 そうそう、最近キアは分身体を活発的に動かし精度の高いホムンクルス作りを加速させてるらしい。

 地・水・川・海・生態系を元に戻す能力に特化したホムンクルスを、あと10年以内に作る必要があるらしい。


 アイツの中でハリネズミの言葉がどうにも引っかかるらしく、世界の歪みに対処できればオワコン世界を脱却した出来るんじゃないかと考えているようだ。


 俺にはよく分からんことだし、好きにしていいよ。って言ってる。

 なんかアイツ、最近ハリネズミとすごく仲良くなって、世界について色々話し合ってるみたいだ。

 案外ウマが合うのかもね。


 俺は2人の剣術指南をしながら幼き子供たちの遊び相手?甚振いたぶられ相手として日々を過ごしながら、常に魔王軍の動きを監視している。


 あと数年もすれば、また動き出してくるだろう。

 今度は前回より強くなってるだろう。

 だがまぁ何も問題はない。


 ……と、思っていたのだが、俺は先日ある男から招待状が届いた。

 内容は、”今の貴様を試そう”であった。

 はい、お察しの通りアイツです。


 オスクリダド当主ロスト。

 推定レベル2,000。


 未だ俺の2倍はあるんだけど……

 キツすぎません?

 絶対!勝てない自信しかねー!!


 いや、考えても仕方ねー。俺はレーニアに内容を話し、直ぐにダンジョンへ向かうのであった。

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