【3】パピーの狩りに付いていく事になった1歳児

 何だかんだで日は経つのは早いもので気付くと俺も1歳児になっていた。

 ちょこちょこ盗み食いと盗み吸いを繰り返した結果、1歳になる頃にはレベルは40にまで成長していた。


 ここまで来ると日常生活で困ることは何も無い。

 寧ろ異常なレベルで何でも出来てしまう。

 イメージしたことが現実に作れてしまったり。

 つまり、食べたい物・吸っていたタバコも簡単に作れてしまう。

 すごく便利なスキルではあるが、この世界にないものを作れてしまうので今は自重している。


 1度タワーマンションをイメージしたら超高層マンションがこのど田舎にそびえ立ってしまった。

 夜だったので誰にも気付かれなかったが急いで更地をイメージし何もなかったことにした。

 翌日隣のばーやが光り輝く天に登る建物を見たと騒いでいたが、少しばかり認知の入ったばーやだったので誰にも気に留めなかった。


 ばーやには悪いが助かったぜ。


 それともう1つ。俺には大切な大切な物がある。

 そう!誰にも譲れない宝箱がある。

 ほら、皆にも子供の頃あったろ?

 大人になって見るとガラクタだらけじゃねーか!

 って言うような宝箱。


 でも俺の宝箱はガチ中のガチの宝箱。

 それにただの宝箱ではない!

 この宝箱はマジックバッグの機能を応用してある。

 容量は知らん!キアが勝手に作ったからな。

 恐らくエグい量なんだろう。


 中身は缶ピー200個、200本じゃねーぜ。

 それに常備食のアンパン200個!

 更に激アマ缶コーヒー500本!

 これだけは誰にも譲れん!!

 だって俺は大人の感情を持っている!

 ゆえにこれは大人の嗜好品!

 この数は常に維持させている。


 ちなみにパピーのタバコは手巻きタバコだ。

 缶ピー様を手に入れた俺には今では不味く思う。

 いやー缶ピー様は神だわー。


 ってまぁ俺の成長と嗜好品の話で勝手に盛り上がってしまったが、今日はパピーとお出かけしたんだよ。

 パピーにとっては仕方なく連れて行くことになっただけなんだけどね。

 その話をしようか。


 ちなみにパピーというかうちの家は冒険者ファミリー兼一応この国の軍人らしい。

 噂は色々と聞いてるがスーパー破天荒というのが俺のパピーである。


 今日はマミーが実家付近の魔物討伐に行くらしく、流石に子連れでは任務に無理があるということでパピーに子守の任が与えられたようだ。


 パピーは快く受け入れた。

 まではよかったが……なんか少し焦りだしている。

 わかるぜ。パピーよ。突然の子守なんて不安しかないよな。うんうん。


 ん?いや、これ焦りじゃねーな。

 これあれだ。禁断症状だ。

 ただのニコチン切れじゃねーか!


「ちっ」


 今、”ちっ“って言った。絶対言った!俺の顔見て言いやがった!


「くぅー……すまん!ベリー!ニコチンが俺を呼んでいる!」


 え?どういう事?呼んでるの、お前じゃん。

 って心の中で冷静に突っ込んでしまう俺。


「仕方がない!ザハル!背に乗れ!いざダンジョンの1階層へ!」


 あー俺をおんぶしてタバコの材料取りに行くのね。

 というか、背に乗れって。まぁ乗れるけど、普通抱っこするよね?

 マジなの?この破天荒パピーは。

 というか、なんならあんたを担いで中層まで下りれますけども……まぁいいや。

 少し腹立ったので心の中で愚痴ってみたつもりだったが、残念なことにキアには丸聞こえだったようだ。


「主、しかしあれですね。パピー、なかなかイカれてますねー」


「お前オブラートって知ってる?160kmくらいのド直球の毒玉を投げ込んでくんなよ」


 そんなこんなでパピーにおんぶされた俺はダンジョンへ行くことになった。

 俺個人では既に10回くらいキアと潜ってるから別段特別なことでもないが、パピーからしてみれば緊張の走る探求のようだ。


 ちなみにパピーが潜るのは2階層らしい。

 解説までにダンジョンには1階層の前に0.5階層が存在する。

 というより半階層ずつ潜って行くのが正規ルートとか。

 2階層に潜るには最低でもレベル4は必須らしくなかなかの難易度なのだ。

 というのが、この世界の常識である。


 俺とキアは既に10階層まで潜っているんだけどね。

 本当はもっと潜れるけど10階層の魔物と戯れることを覚えてしまって最近は仲良く遊んでる。


 パピーの動きは硬い。緊張と警戒が無駄に多くこれでは不意を突かれたら仏さん街道まっしぐらだろう。

 かと言って俺がアドバイスとして言葉を発するわけにもいかんし……

 仕方ない、隙を狙ってる魔物は俺がオーバーキルしてやろう。

 感謝してくれよパピー。

 あ、パピー挟まれたな。どうするんだろ……少し実力を見てみるか。



「っち!挟まれたか……ザハル、振り落とされるなよ」


「だー」


「ったく、お前は気楽なもんだぜ」


 戦力的に俺がパピーの立場ならあのイモムシみたいのから殺す。

 次にアリをやってフィニッシュと決め込みたいところだが、さてさてパピーはどうするのかな?


 理由はある。

 アリは顎の強さはあってもスピードは普通。

 イモムシはスピードはないものの繭《まゆ》を吐いてくる。

 あれに足を取られたりすると結構厄介な状態で2体を相手にしなければならなくなる。

 今の俺ではどっちも問題にならないが、パピーのレベルならどっちも脅威の相手だ。

 戦う順番さえ間違わなければ問題なく倒せる相手でも、順番を間違えれば直結して死の可能性すら出てくる。


 この世界のダンジョンは容赦もなく卑劣に冒険者を狩りに来る。

 勢いだけでは容易に狩られる。


 当然パピーが危険になれば俺が消すが、これが肉親や友人でもない人の付き添いで一緒に潜った場合は残念ながら俺は放置するだろう。

 なぜならその階層で死ぬような奴にその先の未来はないからだ。


 それはこの世界のスキルとレベルが証明してしまっている。


 パピーは冷静だった。

 イモムシに狙いを定め繭を吐く前に斬り伏せ、更には繭を力で絞り出しアリにぶっかけてアリの機動力を完全に奪い冷静に2体を撃破した。


 ほう……パピーなかなかやるではないか。

 パピーは将来見込みのある戦い方をした。


「はぁはぁ……ザハル、大丈夫か?」


「だいあーーー」


「ハッハッ。えらくテンション上がってるじゃねーか。お前も居ることだ、必要な物をさっさと取って帰ろう」


「だや」


 パピーよ。いい判断だ。

 俺は依怙贔屓《えこひいき》なしに思った。

 コイツはいい戦士だと。


 パピーは1年でレベル5に達している。

 ぶっちゃけこの世界ではありえないスピードの成長だ。

 それはひとえに毎日の鍛錬と毎日のダンジョン探索。

 これに限るだろう。

 マミーも元々は冒険者らしいが今は子育て中で滅多に魔物討伐には行けてない。

 身体がなまって仕方ないのか、夜の方が非常にお盛んである。

 ちなみにこの世界、夜の方のスキルも存在するらしく全てスキル=レベルに縛られている。


 こりゃー数年後には弟か妹のどちらかが沢山出来ている可能性も少なくはないな。


 パピーは必要な素材を全て取り終えてダンジョンを後にした。

 その際、背後を狙っていた軍隊アリは俺のスキルで一蹴しておいた。

 今回はかなり多くの収穫があったようでパピーも大満足のようだ。

 恐らく2ヶ月分くらいの量はありそうだ。


 よかったねパピー!


 俺とパピーが自宅に着いた時には既にマミーは帰宅しており、ものすごい剣幕でパピーはマミーに怒られていたが、夜にはいつもの激しい日常に戻っていたので許してもらえたのだろう。


 あとまぁ俺の要望としては毎晩スキルを高め合うのは構わないけど、俺の中身40歳だからね。

 結構悶々我慢してますからね。

 あとさぁ親のファックを見るキツさね。


 色んな意味で地獄の毎日を過ごすザハルであった。

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