第三三話 ※あくまでもマッサージです

「始めてもいいかな?」

「はい。どうぞ、お好きなように」


 同意の言葉を受けた後、俺はまず彼女の肩に触れた。


 三角筋を撫でるようにマッサージ。それから肩甲骨周りの筋肉を指圧で解していく。


「んっ……」


 シャロンの口から漏れ出た声には、確かな快感が込められていた。

 しかし、パラメーターの変化は確認出来ない。

 まだまだ行為に及んだ時間と……興奮度が足りないということだろう。

 俺はそのように考えつつ、マッサージを続行した。


「ふっ……んっ……」


 首の凝りを解した後、背筋をなぞるような形で指圧を行う。

 そして上半身のマッサージが佳境を迎えた頃、シャロンの刻印が淡く発光し始めた。


「ふむ。パラメーターが上がってきたな」


 眼鏡型の魔道装置が、そのさまをリアルタイムで伝えてくる。


 ……伸び方が弱い。興奮度が低いからか。


 では。

 それを大きく跳ね上げた場合、上昇値はどれほど変動するのか。


 ここからが、強化行為プレイの本番である。


「シャロン。事前に謝っておく。恥ずかしい思いをさせたなら、申し訳ない」

「ふぇっ……?」


 呆けたような声を返してくるシャロン。


 そんな彼女の臀部へと、手を伸ばす。


 しかしながら。

 欲望に任せて尻たぶを揉みまくるというわけではない。


 俺は自らの手を、柔らかな尻肉の上部と、尾てい骨の合間へと置いて――

 ほどよい力を込めつつ、一定のリズムで押し始めた。


「んっ……?」


 最初、シャロンが漏らした声は、快感というよりかは怪訝と表すべきものだった。

 しかし。


「んんっ……!?」


 次第に、反応が変わっていく。

 怪訝から驚きへ。

 そして。


「んんんんっ……♥」


 驚きから、興奮へ。


「初の挑戦だったが……どうやら上手くいったようだな」


 呟きつつマッサージを続行。


 グッ、グッ、グッ、グッ。


 臀部と尾てい骨の合間を一定のリズムで押し込んでいく。

 そうすると――


「んひぃっ♥ ふっ♥ んんっ♥ あ、はぁっ♥」


 シャロンの口から嬌声が絶えず漏れ続けた。


「にゃ、にゃに、こりぇっ♥」


 吐き出された疑問。


 その答えは……当然ながら、マッサージである。


 さりとて一般的なそれではない。


 骨盤を押して下腹部に振動を伝え、子宮周りの性感帯を刺激し、女性に桁外れな快感と興奮をもたらす。


 果たして、エリザの提案をもとに考案された特殊マッサージの効果は、


「ふにゃあんっ♥ ひっ♥ ひっ♥ ひっ♥ んぁああああんっ♥」


 見ての通り、絶大であった。


 シャロンの喘ぎ声が激化していくのに合わせて、刻印の発光も強烈なものへと変わっていく。


 その明度が高まっていくごとに、パラメーターも凄まじい勢いで伸びていった。


 これは想定以上の成果であり、確実に喜ばしいこと、なのだが。


「ふぎっ♥ ぃいっ♥ んぎゅうっ♥」


 シャロンの痴態もまた想定以上だったため……なんというか、かなりいかがわしいことをしているような気分になってくる。


 これ以上の進行はシャロンの尊厳に深刻なダメージを与えるのではないか。


 そのように危惧した、瞬間。


「手を止めてはなりませぬぞ、オズ殿」


 会議の最中、エリザがこちらに言葉を放った。


「なにゆえ会議の最中に行為をしていただくようセッティングしたのか。なにゆえ大勢の 《戦乙女ヴァルキリー》達をわざわざ壁際に待機させているのか。その意図を汲んでいただきたい」


 真剣な面持ちを向けてくる彼女に、俺はハッとなった。


 ……現状の全ては、合理性に基づいたモノだ。


《邪神》がいつ襲来するか判然としない以上、こちらは常に時間効率を気にしながら、戦力の強化に努めねばならない。


 さもなくば、我々に待ち受ける未来は、最悪そのものであろう。


「オズ殿は紳士であらせられる。されど、我等の尊厳に対する気遣いは不要。人類の復興と世界の奪還という悲願を成し遂げるためならば、どのようなことでもする。皆、その覚悟を決めております。……そして、そもそも」


 真剣な面持ちだったエリザの美貌が、艶然とした笑みへと変わる。

 そうして彼女は、断言した。


「この場には生粋のドスケベしかおりませぬ。ゆえにいかなる痴態を晒したところで、それを悦ぶことはあれども、尊厳に傷が付くようなことはない」


 この発言に対し、《戦乙女ヴァルキリー》の皆々は多様な反応を示したが……その本質はただ一つ。


 こちらの手腕に対する期待と、興奮である。


「……シャロン」

「ひゃ、ひゃい♥」

「……ここからは、手心を加えずに続行するつもりだが、大丈夫か?」


 こちらが確認すると同時に、シャロンは腰を「びくんっ♥」と痙攣させて、


「お、おじゅ様の、手で……わたひのこと、めちゃくちゃにしてくだひゃいっ♥」


 この答えは彼女だけのものではない。きっと場に居合わせた全員の総意であろう。


 ならば、もはや迷うまい。


 俺はある種の覚悟を胸に抱きつつ――シャロンへの特殊マッサージを再開した。


「んぎぃっ♥ ひゅっ♥ ん、くぅっ♥」


 グッ、グッ、グッ、グッ。

 ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ。


 シャロンの下部を押さえる度に、ベッドが軋んで、異音を響かせる。


「ふぅっ♥ きゅっ♥ くふぅんっ♥」


 臀部を押して子宮周りの性感帯を刺激する度に、彼女の口から艶やかな声が漏れる。


 そんなふうにシャロンが痴態を晒す中、同時並行して、会議も進行していく。


 それは極めて非日常的な状況であった。


 幹部達が今後のことを厳格に話し合う、その横で、快楽に喘ぐシャロンの胸中は、いかなるものだろうか。


 きっとそこには強い背徳感があるのだろう。


 それがシャロンの興奮具合を高めているに違いない。


「んくぅっ♥ ふっ♥ ふっ♥ んひぃぃんっ♥」


 気付けば、彼女の下衣がしっとりと湿り始めた。


 このまま続ければどのようなことになるか、予想出来ぬはずもない。


 だが……俺は心に決めたのだ。徹底的にやり尽くす、と。


 ゆえに手を止めることなく、むしろラストスパートをかけるように動作を激しくさせ、


「んぅううううううううううっ♥ くりゅっ♥ くりゅくりゅくりゅっ♥」


 腰をガクガクと震わせるシャロン。


 ――これで、トドメだ。


 一際強く、痙攣する臀部を押し込んだ、そのとき。


「んきゅううううううううううううううううううううううううううっ♥」


 体表を走る刻印がこれまで以上に眩い煌めきを放ち、それに合わせてパラメーターがとてつもない勢いで伸びていく。


「おぉ……! こ、これは……!」


 あまりの上昇量を前に、俺も興奮を禁じ得なかった。


 パラメーター・アップはその後もしばらく続き……果たして、刻印の輝きが収まったのは、シャロンの一部が収まりを見せるのと、まったく同じタイミングだった。


「へっ……♥ へっ……♥ へっ……♥」


 頬をダルダルに緩ませながら、全身を「びくんっ♥ びくんっ♥」と痙攣させるシャロン。


 股を隠す布地が小水を漏らしたかのように濡れそぼっているが……ここは見て見ぬふりをしてやろう。


「一人で移動するのは、不可能だな」

「ひゃ、ひゃい……♥ しゅみま、ひぇん、オジュしゃまぁ……♥」


 ろれつが回らない彼女を以前のように抱きかかえ、壁際へと運ぶ。

 そうしてから。


「次の人」


 二人目の《戦乙女ヴァルキリー》と強化行為プレイに及ぶ。


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