ネコを飼うことのリアルが、淡々とした文体で書き尽くされている。

治療が不可能な病をもつ「僕」のためにご家族がネコを買い、「僕」がネコを飼う(もしく飼われる)顛末が、少ない文字数と少ない話数で十二分に描かれています。話しは逸れてしまいますが、「買う」と「飼う」がおなじ音であることには何らかの意味があるように思われてなりません。

さて、ネコの寿命はひとのそれよりもはるかにみじかいです。ネコが飼い主の死に目にあうよりも、ヒトがネコの死に目にあう場合が圧倒的に多いでしょう。

愛猫に先立たれて立ちなおれないくらい苦しむひとも少なくないことでしょう。それでもなお、その厳然たる事実が幸運なのか不幸なのかは考え方しだいではないか、などと本エッセイを読んでいて思わされました。「君」が(たぶん)愛した「僕」の目を語りを通して、ほんとうに大切なことがおぼろげに浮かんでくるような本作を、是非ご覧になってください。

最後にひとこと。本作の「ほら」という感嘆詞の使い方はお手本にしたいと思いました。