君が僕の予定を狂わせる。

夷也荊

プロローグ

 僕の家は断然猫派。代々猫を飼ってきた。農家だったから、ネズミ捕りとしての役割も担っていたらしい。しかし、今はほとんど農業をしなくなった。だから猫も必要がなくなった。このまま、ペットはもう飼わないと家族全員が思っていた。


 そんな中、僕は心を病んで、その病気はもう治らないと分かった。そんな僕の為にと、両親が一匹の仔猫を連れて来た。ロシアンブルーの特徴的な青い目が、青くなかったというだけの理由で、ペットショップで激安になっていたという。


 それが、君だ。

 

 きっとアニマルセラピー的な意味が強かったのだと思う。しかし、そんなことで僕の心は全く癒えなかった。だって、僕の心の病気は一生治らないから。それなのに、一時的な気休めのために、経済的にも厳しいのに、ペットを飼うなんて。そう思った僕はその仔猫も、それを連れて来た両親も、無視した。


 僕はスケジュール管理を徹底するタイプで、そのスケジュールが狂うのが一番嫌だった。月ごとの手帳だけでなく、月と週間の両方が書き込める手帳を毎年買っている。月ごとには仕事や通院日などが記されて、週間にはその他のあらゆる予定が書きこまれている。この真っ黒に書き込まれたスケジュールをこなしていくとき、僕は快感に浸ることが出来た。今日もやりきった。今週も予定をこなせた。今月もクリアだ。


そうすることで、生きている意味を自分に見出していた。




それなのに、君が来てからそのスケジュールは大きく狂い始めた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る