　カデルと阿弥陀丸のタッグバトルが終わり、次郎坊、ハーミットそして俺の戦いも終わった。皆がどのように戦うのか、知るだけにとどまった。

　そして今、トゥーラとヒルガオペアによる最後のタッグバトルが始まった。

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　ステータス

名前　：トゥーラ　上位豚鬼（ハイオーク）

レベル：20

ＨＰ　：87/87

ＭＰ　：115/115

筋力　：57

耐久　：103

俊敏　：74

知力　：115

装備　：なし

ユニークスキル：ーーー

　　　　スキル：回復魔法(Ｃ)

　　　　　　　　支援魔法(Ｄ)

　　　　　　　　経験値取得率アップ（Ｄ）

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　トゥーラは進化したことで、ＭＰや耐久、知力が大幅に上昇し、サポートタイプのステータスに最適化された。そして、スキルランクも上がり、ザ・後衛になった。ただ豚鬼（オーク）種特有の大きな体が皮肉であった。

　トゥーラはより多くの仲間がいる状況でその真価が発揮される。しかし、トゥーラ以外に1人しかいないこのタッグバトルでは、あまり使いものにはならないだろう。

　「支援魔法・俊敏強化」

　ヒルガオの動きが速度を増していく。

　ヒルガオは2対の双剣を華麗な体捌きで操る。幾重にも施された支援魔法が肉眼では捕らえられないほどの素早い動きを可能にし、その姿は、風に身を任せ宙を漂う花のようであった。

　舞のような剣術を可能にしていたのは、身体を一切ブレさせない強度な体幹と足さばきであった。股関節やハムストリングスをバネの様に使いどのような体勢で着地しても、敵に帰っていく。相手の攻撃の勢いを足に伝え、その勢いを使い再び攻撃する。その連撃は止まることを知らない。

　しかし、その刃は和熊（教官）に届くことはない。届いたとしても掠り傷程度ですぐに回復されててしまう。手数で勝負するヒルガオと和熊（教官）の相性は最悪だった。

　ヒルガオは圧倒的格上の相手と支援魔法や回復魔法があるとはいえ、1対1で戦わなければならなかった。ヒルガオはその戦闘スタイル上、一対一より多対一の戦闘を好む。自陣が数で勝る場合、仲間の動きをサポートすることも可能で、その上自らも隙を突けば一撃で敵を葬れるほどの攻撃力があった。

　ヒルガオはイライラしていた。トゥーラが後衛に徹しているせいで、ヒルガオの力が十全に発揮されていなかったからだ。小さなヒルガオの体を隠すほどの大盾を使えれば、ヒルガオの動きを補助できたのであれば、和熊（教官）に強烈な一撃をお見舞いすることができたのかもしれない。

　鬼人族は戦闘を好む一族だ。前衛で身体を張れない鬼は臆病者扱いされる。ヒルガオにとって、後衛でこそこそ動いているトゥーラは対等な関係ではなかった。ただの足手まといであった。

　ヒルガオは感情が態度に出やすい性格で、戦闘中も自分の思い通りに事が運ばないと焦って、大きな一発をもらうことが多かった。それが弱点であった。そして、七大部族ではないが歴史ある一族の出来損ないと言われる所以であった。

　「甘い。」

　焦燥から単調な攻撃を繰り返したヒルガオに、和熊（教官）の強烈な拳が鳩尾に入った。

　「お前は戦わないのか。」

　トゥーラに問う。トゥーラに戦闘の意思はない。

　ヒルガオの戦闘不能は、二人の敗北を意味していた。

　戦いが終わり、和熊に回復魔法を施してもらったヒルガオが立ち上がり、トゥーラ目掛けてドシドシと歩みを進める。

　「あなた本当に鬼人族？なんで後ろでチマチマダメージにならない魔法を使っているわけ、敵が見えないのかしら？」

　何も言い返せずトゥーラは黙り込んでしまう。たしかに、ヒルガオは違うやつとペアを組めていればまともな一撃を食らわせられたと思う。トゥーラに弁解の余地はない。

「なんか答えなさいよ。はあ。あーもう最悪。だから、泥臭い上位豚鬼（ハイオーク）とペアなんて嫌だったのよ。」

　内気なトゥーラと高圧的なヒルガオの相性は最悪だった。

　武力を重視する鬼人族において、前線で戦えない鬼など鬼と認められない。教官のように前線で戦えるほどの体術と持続力のための回復魔法を取得するのが、鬼人族としての在り方としては正しい。

　「トゥーラ「待て、カデル。今はトゥーラを見守ろう。」

　「しかし、]

　「トゥーラの成長のチャンスだ。」

　「あなたはなに、医者にでもなりたいわけ。ここにいる私たちは戦士なの。技術も心も戦う気のないあなたが、なんでここにいるわけ。」

　「私はただみんなを癒してあげたくて、でも戦うのは怖くて、」

　「戦うのが怖い？今すぐ荷物まとめてお家に帰りなさい。」

　このヒルガオという鬼、相当気が強い。クラスで上位のヒエラルキーに位置し、ガツガツ物申してくるギャルのようなやつである。ヒエラルキー下位にいそうなトゥーラとはものすごく相性が悪い。

　「帰る家はありません。ここにいないと私は、私は、、、」

　「じゃあ、あなた何のために生まれてきたの？鬼なら鬼らしく、戦って生きればいいのよ。めそめそしている鬼なんて大っ嫌い。」

　今にも泣き出してしまいそうなトゥーラに容赦なく、ぶった切った後、踵を返して帰っていった。

　「これですべてのペアが終わったな。今日はこれで解散とする。この後は各自行動しろ。」

　泣き崩れるトゥーラを何とか宥めて鬼舎に帰っていった。

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　夜、また俺は自分の頭の整理をするため散歩していた。トゥーラのことを考えていた。トゥーラが後衛しかできないようになったのは、俺のせいだ。

　鬼人族のことを何も知らない俺が、あいつらを率いてしまったばかりにこの事態を招いてしまった。試験の時は、パーティーだった俺たちもこれからは違う人とパーティーを組まされることも多くなる。それに、パーティーと言えるほど人数も多くないかもしれない。そうなった場合、これからトゥーラはどうなる。戦いへの恐怖を捨てれなければ、きっとトゥーラは戦えない戦士として、ひどい扱いを受けることになるだろう。

　解決策が見当たらぬまま、鬼舎から少し離れた場所まで来てしまった。こんなに長時間歩く予定ではなかったのに。

　「私怖いんです。生まれて間もなく狩りの方法も教えられないまま、親に捨てられてよくわからない人たちに拾われて、家畜のように馬小屋のような寝床と廃棄物のような食事だけ与えられて、」

　トゥーラの声が聞こえ咄嗟に木陰に隠れてしまった。

　「外に出してもらえたと思ったら、ここに連れてこられて、急に殺し合いが始まって、試験が終わって安全に暮らせるのかと思ったら、その後も戦わないといけないなんて私耐えられないです。」

　生まれてから今日まで抱えてきたものを解放するかのように、トゥーラは泣き出してしまった。

　「そうか。」

　トゥーラを慰めているのはカデルか。

　「俺の話もしていいか。」

　「はい。」

　「俺も生まれてすぐ、死んだのか俺を捨てて行ったのかわからないけど、親がいなくなった。そこからは、生きるためにたくさんの鬼を倒した。俺はそれが楽しかった。それが鬼としての誇りだからだ。だから、俺はお前がすごいと思う。」

　「え、」

　「俺は戦いが楽しくて仕方がない。楽しいから戦っているようなものだ。でも、トゥーラから感じるのは殺し合いをする辛さ、命に対する尊さを感じる。」

　「私はただ平和に暮らせたらって思ってるだけだよ。お互い殺し合う必要なんてどこにもない思うの。」

　「そういうのがすごいと思うんだよ。でも、俺はお前に生きてほしい。強くなったら、相手をたくさん倒せるようになる。でも、それだけ仲間を守れる。」

　「仲間を、、守る。」

　「トゥーラの力を俺たちを生かすために使ってくれ。俺たちのことが大切だと思うなら、仲間を失わないためには、強くなるしかない。」

　カデルが饒舌にトゥーラを慰める。

　「俺もトゥーラを守るから、トゥーラが辛かったら俺が守る。だから、トゥーラもみんなを守れ。そのために強くなれ。」

　「カデル君、ありがとう。とりあえずみんなのために頑張ってみようと思います。」

　カデルの偽りのない言葉がトゥーラの転機となった。

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　ーー翌日の授業開始前

「ヒルガオさん。」

　「なによ。」

　不機嫌そうに返事をするヒルガオ。

　「昨日は足手まといになってしまいごめんなさい。でも、私頑張るから。鬼人族として立派になれるように、最前線でも戦えるように、精一杯頑張るから。これからの私を見ていて欲しい。」

　「わかったわよ。」

　適当にあしらうようにそっぽを向いたヒルガオは、どこか嬉しそうだった。　

　決意が決まったトゥーラのまっすぐな瞳は、もう内気な女の子ではなくなっていた。

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　ステータス

名前　：シルバー　中鬼・玄皁種（げんそうしゅ）

レベル：20

ＨＰ　：100/100

ＭＰ　：90/90

筋力　：94

耐久　：72

俊敏　：115

知力　：80

装備　：なし

ユニークスキル：ーーー

　　　　スキル：無属性魔法(C)

　　　　　　　　武術(C)

　　共有スキル：経験値取得率アップ（Ａ）

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　ステータス

名前　：カデル　中鬼・緋茜種（あけかかね）

レベル：20

ＨＰ　：98/98

ＭＰ　：50/50

筋力　：120

耐久　：100

俊敏　：110

知力　：50

装備　：なし

ユニークスキル：

　　　　スキル：剣術(Ｂ)

　　　　　　　　風魔法（E）

　　　　　　　　経験値取得率アップ（Ｃ）

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　ステータス

名前　：トゥーラ　上位豚鬼ハイオーク

レベル：20

ＨＰ　：87/87

ＭＰ　：115/115

筋力　：57

耐久　：103

俊敏　：74

知力　：115

装備　：なし

ユニークスキル：ーーー

　　　　スキル：回復魔法(Ｃ)

　　　　　　　　支援魔法(Ｄ)

　　　　　　　　経験値取得率アップ（Ｄ）

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　ステータス

名前　：ハーミット　中鬼

レベル：20

ＨＰ　：70/70

ＭＰ　：120/120

筋力　：70

耐久　：60

俊敏　：70

知力　：120

装備　：なし

ユニークスキル：契約

　　　　　　　　慧眼

　　　　スキル：火魔法(Ｃ)

　　　　　　　　経験値取得率上昇（Ｂ）

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