第12話 タッグバトル
午前中の授業では、七大部族のことを学んだ。七大部族を説明する前に
以上、七家は七大部族と呼ばれている。
そして、
どの当主も三段階以上進化している化け物たちである。そして、次郎坊は豚鬼の東海林家、先日カデルと言い合いをしていたちびっ子が、豪鬼の天天丸家の阿弥陀丸というらしい。
俺はそんな七大部族が一角、東海林家の嫡男である次郎坊を倒してしまったのである。てか、なんで長男なのに次郎なんだよ。勘違いしちまったじゃないか。
変なことに巻き込まれそうで言い訳してしまった。それにカデルも変なのに絡まれてしまった。七大部族とは派閥のようなもので、権力争いとか興味ないのでそういうのに巻き込まないでほしい。何事もなければいいが。
昼からは実戦形式のペア訓練らしい。なんでも、これからのレベル上げのための修練では、即席のパーティーで狩りを行うらしい。戦場でもそのような機会が多いからと、今のうちに慣れておけ、だそうだ。
そして、今そのタッグのペアが発表されたところである。
阿弥陀丸&カデル
トゥーラ&ヒルガオ
メイズイ&アンドレ
次郎坊&ミユナ
ハーミット&ウズラ
カルナ&キリエ
シルバー&ユキミヤ
「上から順番に俺と戦ってもらう。」
ほら。嫌な予感が的中した。バチバチの阿弥陀丸とカデルがペアになってしまった。
「貴方様、安心してください。カデルはバカですが実力は本物です。あの阿弥陀丸というものも一緒に戦えば納得するでしょう。」
「そうだな。七大部族が強さ以外を気にするとも思えない。強ければ納得してくれるだろう。」
「そうですね。カデルくんはあまり心配ないと思います。でも、私のペアのヒルガオさんという方は大丈夫でしょうか。」
「大丈夫だーーー
「シルバーってあなたのことよね?」
心配性のトゥーラを俺とハーミットで宥めていたところに俺のペアだと思われる女性の鬼が来た。
「ああ、そうだ。そういう君はユキミヤか?」
「そうだ。よろしくな。」
見た目はほとんど人間に近く、姉御って感じだ。一体どんな種族なのだろうか。
「失礼だが、種族を聞いてもいいか。」
種族を聞くのが失礼なのかは知らないが、聞いてみる。
「人間っぽくて不思議に思っているのだろう。でも、あなたたち4人組と豚鬼の二鬼以外は大体人間のような見た目だろ。」
そうだ。皆人間に近い。教官の話によるとまだ進化は1度しかしていないらしいが。
「ああ、そうだな。どうしてなんだ。進化は1度しかしてないのだろう。」
気づけば周りもこれから組むペアと話し合いを始めていた。
「それはね、七大部族の傘下の鬼たちだからだよ。私たちはゴブリンで生まれてこないのさ。」
「なるほど、そういうことか。」
「そう。だから、あなたたちは特別なのよ。ゴブリンの状態から、私たちのような鬼人族上位の種族がいる試練を勝ち抜いたのだから。そういうあなたも特別な種族のようだけど。」
「そうらしいな。」
自己紹介をしつつ互いが出来ることを確認していたら、カデルたちの戦いが始まる時間が迫っていた。
「試合は10分間だ。俺はお前たち程度の攻撃では死なないから遠慮せず、本気でかかってこい。」
「足を引っ張るんじゃねぇぞ、赤いの。」
「俺が足を引っ張ることはない。そっちこそ遅れを取らないように頑張れ。」
カデルはいいやつだけど不器用だから、多分本当に頑張れって思っているんだろうな。
カデルは進化して剣術に適したステータスや体つきになった。
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ステータス
名前 :カデル 中鬼・緋茜種あけあかねしゅ
レベル:20
HP :98/98
MP :50/50
筋力 :120
耐久 :100
俊敏 :110
知力 :50
装備 :なし
ユニークスキル:
スキル:剣術(B)
風魔法(E)
経験値取得率アップ(C)
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カデルは進化して知力とMPが少なく、その他が高い大分偏ったステータスになった。教官が言っていたが、1度目の進化ではステータスが、2度目の進化ではスキルが大きく変化するらしい。俺の進化も体が大きくなってステータスが大幅に上がっただけなので、進化によって戦闘スタイルが洗練されていくのだろう。
ゴブリンの時から赤髪、赤眼で進化しても変化してはいないが、その眼光はより鋭くなり、体躯も大幅に成長した。
カデルは何より、俺と同じ特殊個体になった。種族は中鬼・緋茜種あけあかねである。変異種がどのような意味があるのかわからないが、これからも特殊な変化をしていくらしい。特に特別なスキルが発現するようだ。
カデルのペアである阿弥陀丸も豪拳の天天丸家と言われるだけあって、徒手空拳の物理攻撃を主な攻撃手段とする。
「それでは1組目開始」
「お前から行け、お前の実力が分からないうちは合わせることなどできない。」
「わかった。一太刀目は俺がもらう。」
赤い鬼が全速で教官に走り出す。まさにその姿は、前世の高級車さながらであった。
カデルは容赦なく首を狙う。だが、教官はそこから一度も動くことなくカデルの攻撃をいなしていく。試験で剣がダメになってしまったので、新たな剣が支給された。
カデルの剣の才はやはり破格であり、見事であった。だが、教官はそれをゆうに凌ぐ。先ほどから一歩も動いていない。カデルの剣術を両腕のみで対応している。
教官の戦闘スタイルも阿弥陀丸同様、徒手空拳らしい。
「あの方は、賢鬼けんき・和熊わぐま。この里一番の回復魔法の使い手であり、体術のスペシャリストだ。ホブゴブリンが勝てる相手ではない。あのカデルというホブゴブリンも見事な剣術だ。あの年齢であれほどの剣術は見たことがない。それほど研ぎ澄まされた剣だ。」
ユキミヤが隣でカデルを褒め称えている。
「やはり、ゴブリンであの試練を勝ち抜く者は並大抵の実力ではないということか。すごいな、シルバー。それを統率するシルバーはもっと強いのだろう?」
気体に心躍るといった感じで俺を見上げてくる。
「すぐわかるさ。今は教官の対策を立てよう。」
「引け―!」
阿弥陀丸が唐突に大きな声を上げた。
「次は俺の番だ。そこで見ておけ。お前の剣術は素晴らしかった。非礼を詫びよう。」
阿弥陀丸がカデルの実力を認めた。当然のことである。
今度は阿弥陀丸が教官に向かって全速で走り出すーーー
10分間が経ち教官の前になすすべなく倒れた二人は、互いを認め合った。
「カデル、お前とは仲良くやっていけそうだ。昨日は悪かったな。よろしく。」
「ああ、俺も阿弥陀丸の拳はすごいと思う、よろしく。」
午後の蒸し暑い気温に押された二人の友情は、深まっていった。
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