第14話 3か月後

 

 俺たちのいる大陸は星の形をしている。幾多の種族とそれに伴う数の国家が存在する。だが、ほとんどの領土を有しているのは、小人族、獣人族、竜人族、人族、森人族の5つの種族である。この大陸の五芒星の描きはじめの部分には小人族が、そこから時計回りに、獣人族、竜人族、人族、森人族とそれぞれの三角形に国を築いている。この内上位種である龍人族を除く、四種族の国々が四大列強と呼ばれている。


 四大列強国は上位種族の次に力を持っており、上位種族と四台列強国の種族以外を総称して亜人族と呼んでいる。鬼人族のいる場所は、五芒星の中心のホームベースの形をした部分である。多くの種族が跋扈し、現在は紛争状態にある。


 四大列強国は、この地域の種族を使い代理戦争の形で、自国の権力の及ぶ範囲の拡大を狙っている。かくいう鬼人族も人族に援助を受けて、戦いを続けている。今は停戦状態にあるが、そろそろ大規模な戦いが起こると予想されている。


 そのための戦力増強のため、俺たちは急ピッチで成長することを求められており、日々修練の毎日である。


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 試験が終わってから3ヶ月が過ぎた。あれから俺たちは多くのことを学び、魔物を倒しレベルを上げみんなと仲を深めた。


 今も無作為に割り振られたパーティーで魔物を倒している。


 「止めをさせ、アンドレ!」


 「了解。セイッと。」

 爆発魔法を足下に発生させ、加速したアンドレからの鋭い大剣の一振りが土塊でできたゴーレムの核を砕いた。


 アンドレは、最強の七大部族と呼ばれる"鬼火" 鬼灯家傘下の一族の末裔である。先天的な爆発魔法の使い手で、爆風で加速して縦横無尽に戦場を駆け抜け、大剣で強烈な一撃をお見舞いする。本当にアホだが、実力は本物でサラサラな茶髪と塩顔系の顔立ちで容姿も良い、本当にアホだが。


 「そっち行ったぞ、ミユナ!」

 

 「お任せ!」

 

 体は鶏、尻尾は蛇の姿をした魔物、コカトリスがその長い尻尾でミユナを捕えようとする。綺麗なブロンズの短髪を左右に揺らしながら、軽快なステップで尻尾を躱す。


 尻尾の攻撃を逃れてもコカトリスには第二第三の刃がある。その大きな図体から繰り出される足技は非常に厄介で、鉤爪に直撃すれば致命傷となる。さらに厄介なのは、鉤爪から滲み出るその毒である。鉤爪から出る毒は神経毒で、傷口に触れると体は痺れ身動きが取れなくなってしまう。


 そのため、コカトリスを倒すなら遠距離からの魔法が鉄則なのだが、不幸なことに無作為に選ばれたこのパーティにコカトリスを倒せるほど、強力な魔法を放てる者はいない。


 尻尾の攻撃も鉤爪でもダメージを与えられずに焦るコカトリス、なす術なしと判断したミユナがその首を取りに、剣を振るう。その時、口から毒を噴出する。鬼にしては小柄なその体を毒が覆い尽くし、蒸気が立ち上る。しかし、毒が晴れ現れたのは轟々と音を立てて燃え盛る青い炎を身に纏ったミユナだった。


 この3ヶ月ほとんど毎日相手にしたコカトリスに虚をつかれるはずがない。


 「火魔法・イグナイトソード」

 全身に纏っていた蒼炎が刀身に宿り、そのままコカトリスの首を刎ねた。


 「ふぅ。余裕上々!」

 気分上々である。ミユナは、ポンコツという言葉がよく似合う可愛らしい女の子である。ブロンドの綺麗な髪に華奢な体、鬼とは思えないその知性を感じさせる風貌とは裏腹に、間違った言葉遣いや、唐突に不思議なことを言い出す不思議ちゃん要素も兼ね備えている。弄りやすいムードメーカーである。ミユナも七大部族・"登鬼"、勘解由家の傘下の一人である。


 そんなアンドレとミユナの二鬼は、我らが誇る二大バカである。そんな彼らが七大部族の一員であると考えると、本当に大丈夫か七大部族、と思ってしまうのもしょうがないことだと思う。


 さて、敵は片付いた。和熊からの信号弾が上がり、今日は撤収の時間だ。俺たちは3ヶ月間、鬼舎の周囲の魔物と対峙してレベルを上げている。


 「アンドレ、ミユナ、コカトリスから素材を剥ぎ取れ。今日の夕飯にする。カデルは俺と周囲の警戒だ。」


 今日のパーティーはアンドレ、ミユナ、カデルの4人だった。


 「こいつの鶏冠とさかは立派だな。だが、俺の鶏冠の方が勇ましい。」

 アンドレ、お前は何を言っているんだ。お前に鶏冠なんて付いていないだろ。


 「そうだよね。アンドレの鶏冠ってモワッてしててフワフワだよね。」


 「そうだとも。わーはっはー。」

 こいつらの会話は初めから訳がわからなかった。他のみんなにはそれぞれ何を言っているか、わからないが、こいつらの中では会話が成立しているらしい。今だって、アンドレの鶏冠をミユナは見たことがあるらしいし。


 こいつらは七大部族の繋がりで試験前から知り合いだったらしいが、互いに試験を受けていることは知らず、鬼舎で会って驚いていた。


 しかし、最近ミユナとトゥーラが仲良くしているのをよく見る。トゥーラが上手くやれているのか、変な影響を受けていないか、心配が募るばかりである。



 俺は3ヶ月の間に大幅な成長を遂げた。アカウントを余分に作ることで、スキルポイントが倍のペースで取得できることに気づいたからだ。


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 ステータス

名前 :シルバー 中鬼・玄皁種げんそうしゅ

レベル:32

HP :108/136

MP :24/129

筋力 :106

耐久 :86

俊敏 :137

知力 :107


装備 :なし


ユニークスキル:ーーー

    スキル:無属性魔法(S)

        体術(S)

        自動HP回復(B)

        魔力操作(A)

        感覚強化(B)

  共有スキル:経験値取得率アップ(S)


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 パーティーは8人まで組めるため、”アカウント作成”で作成したアカウントを3つパーティーに加えた。そのおかげで、スキルポイントは数倍の効率で獲得できるようになった。また、レベルの低いアカウントをパーティーに設定することにより、レベルが上がりやすく高ランクのスキルを取得できた。


 しかし、未だ"アカウント作成"の最後の権能が明らかになっていなかった。


 カデルやトゥーラ、ハーミットらが心配で、早く進化してしまうと離れ離れになる可能性があるため、この鬼人族のアカウントのレベル上げは抑えた。経験知取得率アップ(S)を所持していながら、3か月未だレベル32なのはそういう理由だ。


 三鬼が独り立ちできるまでは、あいつらとともに歩んでいこうと思う。


 そして、もう一つ嬉しいニュースがある。ラスが進化したのだ。

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 ステータス


名前 :ラス 八咫烏ヤタガラス

レベル:27

HP :86/106

MP :25/82

筋力 :92

耐久 :76

俊敏 :106

知力 :98


装備 :なし

ユニークスキル:闇の翼

    スキル:経験知取得率アップ(B)

        重力魔法(A)       

  

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 "闇の翼”は絶対切断の翼である。その翼に触れた部分は無に帰す。この世界初のカラス型の魔物という条件を達成したため、八咫烏に進化したとき獲得したユニークスキルである。それに、重力魔法という非常に稀有な魔法を覚えた。 


 正直、戦力として考えておらず索敵要因としてしか考えていなかったので、棚から牡丹餅の気分である。

 ハーミットの”契約”によって、本来魔物として存在していなかったカラス型の魔物がラスである。これからも空前絶後の進化を遂げてくれそうで、期待に胸が膨らむ。


 このままレベル上げが順調にいけば、1年を待たないまま鬼舎を出ることとなる。和熊教官の予想を上回るほど、俺たちの代は優秀で豊作な年であった。

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