なろう系とはどう向き合うべきなのか

 まず最初に、このエッセイの結論を書いておこう。

 なろう系はなぜ『流行る』のか。

 なろう系というものはどうしてこの世に存在し、あそこまで謎の需要があるのか。

 …その答えは一言で言えば、「惨めで自惚れが強い人ほど褒めたらチョロいから」だ。


 「自分をダメだと思えない人間」「敬われない事にイライラしている人間」「クズで無能なのに誰よりも特別扱いされたい人間」「お先が真っ暗なのに自分への言い訳にしか興味がない人間」

 純度が高いなろう系の読者ほど、この特徴に当て嵌まっていく。

 そして純度の高いなろう系小説ほど、そんな読者を無責任に褒めちぎる。

 その結果、なろう系というものは世に生まれ続け、惨めさの誤魔化しという空虚な役割を全うしながら、様々な物を道連れにして意味もなく加熱し続ける。


「なろう系が好きになるような奴はアホ」


 世間で散々言われている言説。

 彼らはただ叩きたいからなろうを叩いているだけなのかもしれない。

 しかしそれでも、筆者はそれを、どうしようもない程に正しいとも考えている。


 どう考えても、惨めな人間しかあんなものは好きにならない。

 どう考えても、あんなものを好きになっても本質的な意味はない。

 「なろうらしさが極まりきった小説」というものがもしあれば、それを真に面白いと思える人は、おそらく世界に一人もいない。



 しかし、それでもなろう系はもう支配的に流行ってしまっている。

 そして、人はそもそも、全ての惨めさに耐える事など出来ない生き物だ。


 なろう小説の存在を頭ごなしに否定しても、おそらくその行為には意味はない。

 自分がふと惨めさを誤魔化したくなった時、その欲求を全て我慢しても、おそらく心というものは壊れてしまう。

 全くなろう系に触れずに生きる事は、物理的にも精神的にも出来ない。



 なら、どうするべきなのか。

 我々人類はなろう系というものにただ涙を流して屈する事しか出来ないのか。


 筆者は、一つだけ我々にも出来る事はあると思う。

 それは、理解しておく事だ。

 

 なろう系が評価されてしまう理由を。

 なろう系が無限に過熱していく構造を。

 なろう系が人を洗脳しようとしてくる動機を。

 なろう系が何故褒められたものではないのかを。


 異世界でチートを振り回している時に、心の何処かで、この自分は嘘だときちんと思っておく事。

 王子様に溺愛されている時、心の何処かで、自分には本当はそこまで価値はないと思っておく事。

 追放者をざまぁしている時、心の何処かで、実際には自分にも非はあるのだろうと思っておく事。

 そして、おそらくなろう系小説はその事を忘れさせるように努めてくるのだろうけれど、それに付き合い過ぎない事。


「あれはなろう系だ」と分かっている事。

「俺が好きなものはなろう系だ」と分かっている事。

 そんな事は、わざわざこのエッセイに書かれるまでもなく、本当は大勢の人が、既に出来ている事なのかもしれない。

 けれど結局は、それが一番大事な事なのだと思う。



 筆者はこの前、ダラダラとネットを漁っていた。

 そしてその時に、偶然、あるnoteの記事にたどり着いた。

 その記事のタイトル名は「なろう系はなぜ『人気でつまらない』のか」。

 そこには、筆者がずっとずっと知りたかった事の、一つの答えが書かれていた。


「web小説というものは、その構造自体に根本的な欠陥を抱えている」

「なので、面白いweb小説を書いても評価されない事を嘆いている人は根本的にズレている」

「良い物が正しく評価される為には審査員制度のようなものが必要」

「そして、真面目にそれをやろうとするなら、それはもうただの小説賞と何も変わらない」

「つまり、まともな小説を書きたいのに売れたい人は、大人しく自分の小説を電撃大賞にでも送るべき」


 その記事を見た時、筆者は心の底から納得した。

 自分が恥ずかしくなって、こんな事に何時までも気付けなかった事が情けなくなって、だけど、どうしようもなく救われたような気持ちになった。

 これをもっと昔に分かっていたら、自分はきっと、もっともっと救われていた。



 勘違いしない事。

 結局、それが大事なのだと思う。

 自分を誤魔化してもいい。自分を誤魔化している人がいてもいい。

 世の中が何処かおかしくて間違っていても、それはある程度はしょうがない。

 

 自分は本当は何者なのか。

 他人は本当はどんな人なのか。

 おそらくそれだけが、結局は、大事なのだ。

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なろう系はなぜ『流行る』のか もちあんこ @zxcvzxcv22

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