終幕

エピローグ この手は二度と……

「リーシェル、これから先、ずっと一緒にいようね」


 無数に煌めく星空を見上げ、穏やかな笑顔で彼は言う。

 握りしめた大きな手の感触も、傍にある笑顔も、もう夢に見た幻ではなくて。


「約束よ、エデア」

 屋敷の屋上から星を眺めるリーシェルは、繋がれた手に力を籠め、呟いた。

 子供のころ、本邸の屋敷屋上から何度も眺めた満天の星空。必ず来ると信じた、未来のような美しき綺羅星たち。


 それらを視界に微笑むと、エデアは彼女をそっと抱き寄せ、慈しむように髪を撫でる。

 どれだけ長い間離れていても、互いを想う気持ちだけは、微塵も変わっていないから。

「うん。もう二度と、この手を離したりはしない」

「にゃあ」

 今度こそ、彼女を幸せにするのだと意気込むエデアに、リーシェルの肩に乗ったクロナの同意が重なり、二人の間に笑みが零れた。


 大好きなエデアと、彼の要素エレメントを有していたかわいい愛猫。

 長い長い苦悩も努力も、幸せな今に辿り着くための通過点。泣いた日々も、笑ったあの日も、今度は彼と共に重ねていこう。


 たとえ二人の青春が、六〇〇歳からの再スタートでも構わない。

 命ある限り、前を向いて。

 後悔しない選択をしていこう。

 誰のどんな人生だって、人生はたった、一度きりなのだから――。



 風伯の魔女 完

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風伯の魔女 みんと@「炎帝姫」執筆中 @minta0310

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