神話あるいはおとぎ話的な雰囲気の作風で、読み応えのある一作です!

重厚でシリアスな設定や描写など一般的にはWEB小説らしくないし、あまりウケないのかもしれないが、私はこういう作品が評価されてほしいとも思う。


とある老婆が語る形式で綴られていくので、十数万文字読んだ末、最後にまた老婆の視点に戻った時のカタルシスがすごい。
特に、初めは何が何やら分からなかった老婆やら、旅人やら村人やらの要素が、作中で語られる物語を経ることで「これってもしかして?」という伏線回収にも似た心地よさがあった。


作中、天使の回想で登場するサブキャラクターたちの話も本編と同じくらい魅力的で、この人たちの物語単体で読んでみたいと思った。
ラノベ的な分かりやすいキャラ付けこそ少ないかもしれないが、それよりも深みのある“生き様”を感じるキャラクター造形に感心してしまった。


本作は完全三人称(いわゆる神視点)で描かれる珍しいタイプの小説なので、初めは少し読みにくさを感じたが、次第にそれが、第三者の語り部の存在を感じさせてくれて、本作の神話っぽさや童話っぽさを引き出していると感じるようになった。


一風変わった構成でありつつ、ど真ん中の人間模様や恋愛模様を描いてくれる。それでいて、読み応えのあるシリアスな作風が好きな方におすすめの一作です。

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