ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』という有名な児童小説の世界に現代の女の子が迷い込むところから始まる物語。
『十五少年漂流記』は1800年代に出版された古典中の古典だが、本作ではそんな原作へのリスペクトを存分に感じつつ、しっかり現代版にアップデートされている。
例えば、原作にあった黒人差別的な要素への抵抗もあれば、SDGsといった最近のトレンドまで抑えられている。
本作が応募されている角川つばさ文庫小説賞が児童文庫の公募であるため、教育という面も意識されているのかなと思った。
ちなみに、『十五少年漂流記』が未読でも、作中で説明はされているので問題なく読めるようになっている。私も未読勢だったが、楽しく読めた。原作を読んでいれば数倍楽しめたのでは……と悔しい気持ちは少しあるけど。
児童書の古典を踏襲する王道をしっかりやりながらも、『十五少年漂流記』の世界を変えていくのが新鮮な一作です!
ジュール・ヴェルヌが書いた「十五少年漂流記」
その世界に中に入ってしまったのは、13歳の女子中学生ヒカリちゃん。
男の子たちの中に、女の子が一人!? しかも漂流した無人島で大丈夫なの!?
と、心配になりましたが杞憂でした。
ヒカリの友達になったのは、ガーネットという女の子。ヒカリを助けてくれる頼もしい存在です。
少年たちはみんな良い子……というわけではなく。敵対関係も生まれます。
でも大丈夫!
ヒカリには、料理ができるという特技があります。そして、アイデアと聡明さも兼ね備えています。
それになによりも、「十五少年漂流記」を読んでいるので、この世界を知っているという強みがあります。
無人島なので、食材が豊富にあるわけではありません。しかも、助けは当分来ない。
そんな過酷な条件の中で、ヒカリが食べることだけでなく、環境や人種問題にも目を向けます。
ヒカリのおかげで、生き延びるためのサバイバル生活から、自分らしく楽しく生きる。そのような方向に変わっていくような気がしました。
ヒカリの奮闘。そして、シェフになりたいという夢が詰まった物語です。
第一章までの公開ですが、きっとこれからもドキドキワクワクの世界が広がっていくことでしょう。
続きを読める日が楽しみです。