概要
裏切らないこと、そばにいること。
兄がその女性を連れてうちに帰ってきたのは、冬休みの終わる直前のことだった。
きらきらとした笑みを浮かべる彼女は、冴えない私なんかとは違う都会の人だった。
──変わる家族の形と変わらない関係性の存在を描いた、1つの家族ドラマ。
カクヨム甲子園2024 〈大賞〉受賞
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これを書いたのが高校生だという衝撃
高校生の葉月が、兄が突然連れて帰ってきた彼女の今村美月に複雑な感情を抱くところから始まるお話です。
カクヨム甲子園(高校生限定)大賞作ということで読みましたが、確かに恐ろしいほどの描写力、臨場感、説得力。
高校生くらいの頃の本人にもよく分からない感情の混濁、何に腹が立つのか分からないけれどとにかく納得がいかないあの感じ、若さゆえの剥き出しの鋭さ。
反面、ただ分からず屋なだけではない理解力と想像力も兼ね備えている。そんな微妙な年代。
それらを飾らずに大袈裟にもせずに、ありのままみずみずしく描き出した、大賞も納得の名作です。
あなたも是非読んで、若い才能に身震いしてください。 - ★★★ Excellent!!!家族になろうよ
冬休みも終わりに近づいてきた頃、兄が連れてきた今村美月という知らない女性。すでに両親公認の間柄に妹である主人公の葉月だけが取り残されてしまう中、様々な感情に揺れ動くヒューマンドラマです。
兄と九つ歳の離れた高校二年生の葉月は、兄を突然現れた美月に取られたという先入観を抱いてしまい、自ら心の壁をつくり、せっかくの会話の機会に水をさしてしまいます。年頃の女の子の心情がありありと浮かび上がる二人のやり取りから強く共感出来ることでしょう。
とても興味深いのは、葉月が抱く負の感情を自身が作っている最中の卵焼きが、まるで代弁するかのような心理描写です。
ぐるぐるに混ざり合っていて、それでいて均一であ…続きを読む