詩的で心に残る一文目から、作品の持つ空気感にぐっと惹き込まれました。心の機微の切実な表現、巧みな描写力や文章力には舌を巻きます。答えの出ない問いを巡らせてしまうような、孤独に似た心情の解像度の高さには感服しました。「髪を切る」という何かと決別するかのような行為、それによって揺れ動く心情、自分を静かに見つめる姿が文学的で美しいと感じました。どこまでも深く、確かな質量のあるこの小説に、少しでも多くの人に出会ってほしいです。
読後、自分はどれくらいの深さまで「潜ってた」かな〜って想像してみちゃいました。で、いつの間に海面に上がったのだろう。とにかく作者の方がかく高校生の心理描写にいつも感心します。絶妙!
一話分にしては長めの文字数なのに、文章のリズムが途切れないからスラスラと読み進めることができました。自己の在り方に葛藤を持つ主人公の心情が、小さな動作や言動の一つ一つで繊細に表現されています。是非是非、最後まで読んでみてください。
高校生の頃っていろんなことに悩むんだなぁ。心の機微に若さを感じる。