第12話 虐殺者と復讐者
「かぁん…」
バキン、と、召喚モンスターガムシャラのクチバシが、剣の切っ先をへし折った。本当は領主様の手首を狙ったのだが、剣一本分、間合いをずらされた。凄まじい技量だな領主様。
現HPが低いほど威力を増すスキル、
同様に、魔法少女キャンセラーver.2.0の効果により崩れ消えてく摩天楼。粉々になる足場から、飛び石を遊んで渡る子供の様に、跳ね降りてく私と領主様。いや、私は子供だけども。
「ふむ?君は、」
二人して跳ねながら、領主城裏門の外側に着地する。一瞬、日光が影に隠れた。上空で鳥が羽ばたいているのだろう。獣人たちや近習からだいぶ離れたな。
「君はもしかして、」
領主様は、細かい瓦礫をマントで払いながら接近。剣を振ってきた。切っ先が無い分、だいぶマシか。ガムシャラの居なくなった只の杖で、剣の軌道を反らす。反らす。視えてても、少し誤るだけで杖ごと袈裟斬りに成りかねない。
何でこんな優秀なのに人って狂うんだろう。この人だって、子供の頃は
「ああ、やはり、君、
「魔法少女キャンセラーはね、字のとおり、魔法少女の魔法をキャンセルするアイテムなんだよ」
何しろ私、あの子には教えてないからね。
「そして魔法少女はね、魔法の存在を心底信じてた少女しかなれないの。つまり、絵本の世界に憧れていた純粋な女の子か」
「存在することを知っていた、最初から魔法が
頭が良い。
「私、純粋な女の子だったように見える?」
「レディをネガティブに評するのは、紳士の矜持に悖る、かな」
むう。それじゃ頷いているのと変わらなくない?
「無級の魔法少女森田千日紅、改めまして、『未来視の魔女』皆殺しのチカちゃんです。どうぞよろしくさようなら」
頭が良い。こちらに何かされる前に、と領主様が猛ラッシュを仕掛けてきた。
私は、杖を砕かれながら、シンキローが消えた為に密閉出来なくなった小袋、用意していた搦め手、を取り出し領主様に投げつける。
警戒し、弾き飛ばすことすらせず小袋から距離を取る領主様。結びがほどけ、中の粉末が散らばる。
「スパイス……いや、抹香?」
「正解だよ。モンスターが大好きなお香なんだ」
この土地に来るとき、行商のおじいちゃんにお願いして運んでもらった《
「さて、私の魔女としての
得体の知れない小袋を警戒し、距離を取ったのは賢明な判断だ。この場合は無意味だが。お香は合図なのだ。彼女には私の臭いを覚えさせている。だから、この場にいる私以外の誰かがターゲットだと、彼女は確信した。
ォォォ……
「原因まではわからなかったけど、召喚魔法すら使えなくなった所は視えていたからね。別の手段を用意した」
オォォォ……ッ
「何の音…上!」
鎖が千切れ飛び、ハーピィ007、と刻印されたタグが宙を舞った。かつて《視た》光景だ。
剣に、その豊満な胸を貫かれても気にせず。
白濁した目をかっぴらき。
「オォミナエシィィッ!!」
特別降下隊ハーピィ007。《使い魔の魔女》の哀れな弟子たちの挺身部隊。その最後の生き残りが、仲間たちの復讐を今、果たした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます