素晴らしき哉ウリ科作物その2!!

「キュウリは食べる水筒なんです!」


「臭いからやだ」


 避暑にと、砂糖問屋のご隠居が提供して下さった果物の類いを前にして、千日紅ちかく師匠が駄々をこねました。



「ウリの類いはみんなこんな匂いですよ」


「マクワやスイカは良いんだよ。甘いから」



 そう言うと師匠は小振りな西瓜を1つ取り、



「冷やせ、割れ」



 恐らく魔法で細かく切り分けてから、編みカゴの上に戻しました。



「わ、冷たい。すごい」



 口に含むと、体に甘さが染み渡り、疲れが取れていくような心地です。

 昨日だけでダンジョン探索、要人救出、城攻めに領主暗殺と色んな出来事がありました。自覚してなかったけど、まだ私の体は緊張が解けていないのでしょうね。



「私も少し寝ます。何か御用がありましたら直ぐに起こしてくださいね」



 先刻の師匠の真似をして、クッションの海に飛び込む。体格が違うのでぱふっではなくボフン、と擬音がなりそうな埋もれかたをした。





 目を覚ますと、至近距離にあの青い瞳があった。



「襲撃受けてみんなとはぐれた」



 夢心地で呆けていた頭が一気に覚めました!



「お、起こしてくださいよ!」


「いやぁ、気持ち良さそうに寝てたから」



 ひっくり返った馬車の屋根部分で、クッションに包まれて寝ていました!この状況でも起きなかったんですか私!



「相手は多分、夏都ザナドゥシダレレモ……シダレモモの配下だね。私はそう視た」



 噛んでも気にしない!かわいい!



「来てください!カエルさん!」



 魔法少女の魔法を行使。召喚魔法により契約したモンスター、二足歩行の大きなカエルさんを呼び出し襲撃に備えます。



「あ、もう周りには敵はいなむぎゅう」



 潰れた馬車は、思った以上に狭い空間になっていたらしく、ミチミチに詰まったカエルさんが、床板と師匠を吹き飛ばしてしまいました。



「師匠のカタキー!」


「ゲコォォォォ!?」



 カエルさんのお腹を殴りました。ポヨンとした弾力と、ぷるぷるの粘液に弾かれ、何の痛痒も感じていないようです。流石私のモンスター、頼もしいです。



「情緒が激し過ぎる……いや、10歳だったねそう言えば」



 師匠が枝葉を体にくっ付けながら戻られました。視界が広がり辺りを見渡せば、細い木々が密集した谷間に私達はいました。

 どうやら馬車は襲撃を受けて道を逸れ、山道を転がってこの場所へと落ち着いたようでした。



「賊どもは駅路から逸れた、山の中腹にでも潜んでいるはずだ。探して仕留めよう」


「わかりました!」

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