素晴らしき哉ウリ科作物!!

 私、五月女乙女、10才!最近、魔法少女になりました!!

 実家を飛び出して受けた、隊商の護衛依頼で偉大な可愛い推し…お師匠様と出会い、弟子入りして最初の冒険で、大都市丸々巻き込んだクーデターに参加することに!


 三途河国トライビアリヴァニアの名門オミナエシ家の城にて、敵対する先輩魔法少女と戦っている間にクーデターは終息、翌朝には新領主様から奪い返される、という体で領地から出ていくことに!

 邪悪な魔女としてこれまでも各地から指名手配されているらしい推し匠様ですが、外見と外聞のギャップから当人と気付かれてないらしく、砂糖問屋のご隠居様の後ろ楯もあり順風満帆の旅を続けてきたそうです!それを聞いて私も安心です!



「その夏都ザナドゥシダレモモと名乗った魔法少女の主君は別にいるはずさ。彼女を追っかけて……いやまって10才?」



 千日紅ちかく師匠からのご質問。直ぐに応えます。



「はい!一月前の誕生日に、魔法少女になりました!!」


「……同年代だと、思ってた」


「運命ですね!!私も思っていました!」


「私、14歳」


「え、えええー!」



 流石は師匠!こんな可愛らしいのにお姉様だったなんて!



「ちょ、ちょっと眠るね。ダメージを受けたら寝るに限る。大体それで回復するから」



 箴言を残して、砂糖問屋のご隠居がご用意してくれた馬車内で、クッションに埋もれる千日紅師匠。

 唸りながら眠る師匠を眺める。綺麗な青い瞳が隠れてちょっと残念。


 初めて出会った時の、隊商の護衛依頼での、千日紅師匠の活躍を思い出す。

 巨大な摩天楼ビルディングを生み出して天空に上がり、鳥のつんざく鳴き声と共にモンスターの群れを一瞬で始末する小柄な少女。まさに、絵本から飛び出してきたような存在。

 家庭の事情で数多くの魔法少女を見る機会があったけれど、あんなに楽しそうに、心底魔法を楽しそうに使う人を見たことがなかった。この人が、きっと本当なのだと。本物の、魔法使いなのだと思った。


 魔法少女の証、契約の魔法書と呼ばれる薄い本スマートホンを取り出す。この本の待受画面表紙には、人生で一番美しいと思ったものが映されるらしい。少し前までは、亡き母の肖像画が、その表紙に描かれていた。今は、画面いっぱいに、青く輝く瞳が表示されている。


 私も、この人の様に、誰かの為に魔法を使いたい。この世のあらゆる理不尽に対して、圧倒的でありたい。あの日救われなかった自分を、自分と同じような誰かを、救いたいのだ。

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