第7話 暗殺者と虐殺者

 襤褸の外套に燻んだ鎧。


 緑色の肌、ぬめりを帯びた手には立派な剣を持つ。おぞましい容貌の怪異がそこにいた。



「げこおおぉぉ」


「「ギャアアアア!」」



 呼び出された怪異は暗殺者も乙女ちゃんも一緒くたに、空いた手で抱きすくめ拘束する。嫌だなぁ。あんな大きなカエルに抱き締められてベトベトになるとか。すごく嫌。



「でもナイスだよカエルさん」



 お陰で隙が出来た。



「あ、マズッ」


「ついばめ ガムシャラ」



 ちゅどん。と爆音ならして暗殺者の頭を吹き飛ばす私の召喚モンスター。最善の選択肢が選べなかったので、次善たる、情報を諦めて排除する、という選択をした。



「げこぉあ!」



 あ、カエルさんの肩ごと抉ってしまった。彼?の着ていた鎧と外套も砕けて破れ、地面にパラパラと落ちる。



「げこげこっ。めっ」



 むっ。恥ずかしそうに胸元を隠している。もしかして女の子なのか?カエルに胸もヘソもなかろうに。



「あ、鎧のお陰ですかね。肩の方は無事みたいですよ。良かった」


「げこー」



 助け出された乙女ちゃんが、カエルさんの外套を拾って、彼?を労った。凄いな。よくそんなペタペタと触れる。粘液拭かなくて大丈夫?



「どこにも死体がニャい?」


「そう。あの勢いなら天井にでも飛び散ってると思ったんだけどウサ」


「臭いはしないワンね。不自然なほどに」


「逃げられた。と考えた方が良さそうでチュね」


「あ、ダメだ乙女ちゃん。私の魔法じゃ弱すぎて粘液けせないや」


「じゃ、じゃあ私が」


「やめて、汚れを落とすだけなのに何かカエルさんごと消し飛ばしそうだ。キキキさんに頼もう」


「げげこぉ!?」


「のんきだニャあなたたちっ。ちょっと待ってニャさい」



 ニャムニャムと何か唱える猫獣人キキキさん。するとダンジョンの壁が崩れ、通路が現れた。何だそれ。そんな魔法知らはないぞ。



「熱と水を与えて糊を剥がしただけよ。あニャただって放熱板に細工してたじゃニャい。そっちの方が難しいよ」


「へえ。面白いニャ……な。練習してみよ」


「千日紅師匠。本当に全員同じ魔法しか使えないんですか?」


「…?魔法少女はそうだけど?」


「いえ、はい。わかりました。修行します」



 何か覚悟を決めたらしい。真面目な子である。



「先に進むわ。……そのネバネバ取るのは着いてからで良いかニャ?」


「あ、はい!大丈夫です」



 うーん。器もデカイ。



「千日紅さん。御曹司の妻子を連れダンジョンを脱出。拠点を替えまチュ」


「わかった」



 刺客に身内から相当な犠牲がでたようだし、すぐにでも移動する必要があるのだろうが、自分たちもダメージ抜けてないだろうに良くやる。

 戦闘して彼女らを消耗させたのは私の責任だ。代わりに腕を奮わなきゃね。



「わかった任せて。全部にめちゃくちゃにしてあげる」

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