第11話 虐殺者と虐殺者

 裏門にたどり着く寸前で発見。領主とその取り巻きに奇襲をかけた。


 あのまま暗殺者魔法少女に足止めされていたら逃げられてた。別に、見晴らしの良い市内で陣形組んで反撃してきたら、ガムシャラで一網打尽にしても良いのだけれど。



「領主様。話し合いをしよう」


「既に殺し合いが始まっているが」



 筋肉質なおじさん領主様が剣を抜く。周りでは、領主様の取り巻きと獣人冒険者達がチャンチャンバラバラと大立ち回り。二人きりになれて落ち着いて話が出来る。ラッキー。



「御曹司はケモ奈さんが奪還したよ。あなたには引退してもらって、この土地はあの夫妻が運営して行くことになる。神妙にクーデター頂戴しろい」


「帝室の藩屏はんぺいたるオミナエシ家は、そう易々と立て替えられるものではないよ」


「だから私みたいなならず者が押し入ってるんだよ。私が1回盗って、そのあと御曹司が取り返せばメンモクたつでしょ」


「うーん。監督不行き届きで減封とかありそうだなぁ。抵抗させてもらうよ」


「死に様は喧伝しといてあげる。おぉぉー見事ぉぉぉ!」


「カァん!カァんカァんカアん!」



 杖を止まり木にしたガムシャラで、領主様の剣と撃ち合う。天然の鶴嘴だ。または鳶口か。

 もちろん、私の腕力で屈強な領主様とやれるわけないので、ぶんまわした杖の軌道に合わせてガムシャラの羽ばたきで加速して、殴打の威力を上げている。


 ガムシャラ、雑魚とはいえモンスターなので、馬力は人のそれとは別格なのだが、ついていってる領主様はおかしい。

 並みの、十人並みの騎士、つまりは鎧を着て馬に乗れて、従者を何人も従えてるような戦闘のエリートとしてスタンダードな実力をもつ騎士、ならばとっくに頭が飛んでいるのだが。


 召喚魔法以外の、火や氷なんか魔法は全て不発に終わってるので、当然のように魔法少女キャンセラーを持ってるね領主様。じゃあ、召喚魔法で何とか、どうにでも、するしかない。



「引きこもれ蜃気楼。摩天楼『サツイマシマシ建て増し虐殺空間』モード」


「どらどら~」



 シンキローに指示して、先ほどお城を壊した摩天楼ビルディングを再び発生、領主様と私を取り込ませる。

 更に、私と領主様が居る階層では、上下左右から菱の実状のブロックが突き出るよう建て増しする。これで、体の大きい領主様はまともに身動きとれなくなった。



「これは、参ったな。君は不都合無さそうだね」


「小さいからね」



 この虐殺空間はフィジカルの弱い私が、二重の意味でジャイアントキリングするためのモードなのだ。



「仕方ない。ああ、ふふ、なるほど『是非もなし』か」



 ひとり合点して笑いながら、領主様が懐からファンシーな、アップリケの付いたアイテムを取り出して、



「やっぱり魔法少女キャンセラー」


「ああ、そうさ、そして」



 取り出して、アップリケをもう一枚・・・・、くっつけた。



「これが、魔法少女キャンセラーver.2.0」



 ピコピコと可愛らしい音がなり、虐殺空間が崩れていく。シンキローもガムシャラも、体が透けて、《存在》が薄くなっていく。



「お見事」



 思わず呟く。《あの子》は、ここまで私を追い詰められるほどに、力を、技術を身につけたのだ。



「魔法少女、敗れたり」



 崩れる床を駆けながら、《存在》が脆くなった菱状消波ブロックを肩で吹き飛ばしながら、領主様の振る剣が迫る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る