6thゲーム

「闇雲にじゃんけんしても結果はついてこない……」


 今日の卓也は過去にもないほど運が悪く、このまま普通にじゃんけんをしても負け続けてしまうような気がした。


「出す手をよく考えてからだすと、グー以外、チョキやパーの頻出率があがる……」


 眉唾物だが、なにも考えないよりはいいだろうと卓也は思った。


 なにより、疑ってかかるべき情報にすら頼ってしまうほど卓也は追い詰められていた。


「じゃんけんしませんか?」


 卓也は通りすがりの男性にじゃんけんを求めた。


 これまで、卓也が自ら他人にじゃんけんを求めたことは一度もなかったが、追い詰められた卓也はじゃんけんを持ちかけた。


 男性はじゃんけんの要請を請けた。


 男性は、疲れ切った表情で拳を構える。


 彼は、自らがじゃんけんして相手を負かすことで相手に死が近づくことで疲れ切っていった。


 目の前で絶望する人、どことなく落胆した表情をする人、悲しげな表情をする人。


「もう、負かしたくない……」


 彼は呟いて、じゃんけんを始めた。




「もはやなにかのお約束みたいだな……」


 もしかしたらなにかしらの確率操作にかかっているのかもしれない、卓也がそう大真面目に疑うくらいには運が悪い。下振れ過ぎている。


 だが負けは負けだ。幸い、レートが格上の相手に当たってくれたおかげで減少レートは決して多くない。


 減少レートは、10。現状の卓也のレートは1417であり、ここから全敗するもしくは格下に当たり続けない限りレートが1350を切ることは考えにくい。


 どこかで、一勝。これまでレート格上とのマッチが多かった以上、一勝さえすれば死ぬことは無いだろう。


 だが、逆に残り四戦のうちどこかで勝たなければならない。今日は調子が悪すぎたため、卓也はがむしゃらに戦うよりも日を変えることにした。

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