4thゲーム 前編

「そう言えば、お前がレートを譲った女子高生……アイツ、別に貧乏とかじゃなかったらしいぞ。本人がそう言ってた」


 卓也は衝撃を受けた。


「つまり、俺は、騙されたってこと?」

「端的に言えばそういうことになる。残念だったな」

「教えてくれてありがとう、参考になる」


 卓也は青年に別れを告げ、歩きだした。


「まさか、二分の一を三連敗するとは……」


 女子高生の分はあえて負けたので二連敗というのは然程低い確率ではないが、下振れていることには間違いなかった。


 青年に負けたことで卓也のレートは三戦目にして1470から1454にまで減少し、最終レートが1350を下回る可能性も出てきた。


「目安として、二勝すればレート1350を下回ることはほとんどないらしいけど……」


 見事に一勝もできていない。


「次こそは絶対に勝たないと……」


 そう、決意を新たにした。


「レート、譲りましょうか」


 話しかけてきたのは、見たことのある中学の制服を着ていたのでおそらく女子中学生だ。


 そして、レートを求める彼女の声を聞いて、真っ先に先ほどの女子高生の姿と青年の言葉が思い出される。


 だが彼女は、レートを譲る側に立つことを望んだ。


 逆に怪しく感じて、卓也は問いかける。


「一体どうして自らレートを投げ捨てるような真似をするんだ?」

「私、死にたいんです」


 どうやら並々ならぬ事情があるらしかった。


 だが、卓也はまず警戒する。


 卓也はお人好しでこそあるものの、底抜けのお人好しというわけでもなく、多少の警戒心はある。


 その視点で言うならば、彼女の言葉はあまりにも胡散臭かった。


 卓也は彼女のことを疑ってかかった。

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