3rdゲーム

 卓也はゲームが始まってから二連敗していた。


 家計が辛い男の件はともかく、女子高生に関しては彼が自ら望んだことなのだが――


「ちょっとまずいかもな……」


 そこで、彼は攻略法を探ってみることにした。


 計算式上、自分よりレートの高い相手と当たった方が負けた際のリスクも勝った際のリターンも大きい。


 極論、レート1600の相手に勝利すれば卓也のレートは1490あたりまで回復することが出来るし、相手がレート1600であれば失うレートはたった10で済む。


 しかし、レートが高い者はレートが低いものと当たりたくない。なぜなら、レート格差のマッチは、レートが高い側にとってはハイリスクローリターンだからだ。


「だから、自分のレートを高く見せる行動をするか、レートが高そうな人に勝負を挑むことが有利に繋がるってことだ」


 だが、レートの高い人間がどういう立ち振る舞いをするのか、それがわからなかったので卓也は一旦家に帰ることにした。


 インターネットを利用すれば、少しくらいは有益な情報が手に入るのではないかということを期待したからだ。


「でもまあ、インターネット……」


 インターネットの情報は思ったより不正確で、思ったより限定的だ。


 参考にならないので、卓也は自ら攻略法を探すしかなかった。


 そこで少し考えると、卓也はじゃんけんに勝利したと思われる人に声をかけることで、超低レートの相手と対戦する確率が低くなることに気づいた。


 そして、じゃんけんに勝利した人は反応がわかりやすい場合が多い。


「すみません、じゃんけんしてくれませんか……?」


 卓也が話しかけたのは、先ほどの女子高生に勝利し、さらにもう一勝した少し悪そうながらも良心は持ち合わせていそうな様態の青年だった。


 しかし、卓也はそのことを知らない。


「ああ、構わないぜ」


 彼らは無用な取引などもせず、じゃんけんをした。

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