じゃんけんデスゲーム

デスゲームの始まり

『これより、じゃんけんデスゲームを行う！』

　黒ずくめの謎の人物が謎の手段でテレビ画面上に現れて言った。

　それを受けて、Twitterのタイムライン上では様々な憶測が飛び交う。

　なにかまずいことが起きているんじゃないかと疑うアカウントもあれば、冷めた目でどうせ捕まるなんて呟くアカウントもあり――

　それから、謎の人物が捕まることは無かった。

　謎の人物は、どうやら日本だけで活動しているらしく、どこにいるのかもわからないためひとまず日本以外の各国は静観を決め込んだ。

『ひとまず、私の言うことを信じていないであろう愚民共のために、数名を殺害する』

　告げられた名は、現在の総理大臣、有名アイドル、大手Youtuberなど、いずれと超有名人たちであった。

『今告げられた者たちを、順番に殺害する。当人たちは護衛をつけておくのが吉だろう』

　それから、謎の人物はその日が終わるまでテレビ画面やラジオ、インターネットの一部を占領し、同じ内容を繰り返した。

　そして翌日には総理大臣が死亡し、護衛の発言によれば気づかぬうちに絶命していたとのことだった。死体も、気づけば無くなっていたという。

　当然”上”の人間は緘口令を敷いたらしいが、このご時世なのでインターネットから情報が洩れ……。

　そのさらに翌日、謎の人物が告げた有名アイドルが殺害された。そしてさらに翌日、大手Youtuberが殺害。他にも、謎の人物が告げた人間は全員殺された。

　彼が殺害した人物はどういうわけか死体が発見されないらしかった。でも、息絶える瞬間を必ず誰かが目撃していて、だから殺害と結論付けられたという。

『ここ数日で、私が言った人物が全員殺害されたと思う。この状況なら、私の言うことを信じてもらえるだろう』

　謎の人物が日本中に告げて、ついには日本中どころか世界中で話題になった。

『今現在日本にいる、中学生以上の人間全員を対象に、デスゲームを行う』

　続けて謎の人物は説明した。

　デスゲームは、じゃんけんを使って行われる。あいこだった場合は勝敗がつくまでを一戦としてカウント。

　最初に全員一律で1500のレートを得て、必ず十戦じゃんけんをする。

　レートは、謎の手段によって現在日本にいる中学生以上の人間全員の手元に出現したスマートフォン状のデバイスによって記録される。

　どんなメカニズムで記録が行われるかは不明。だが、確実にレートは上下する。

　勝敗によってレートが上下し、最終レートが1350以下の場合は死亡する。そして、最終レートが1650以上の場合は100万円を得ることが出来る。

　参考程度に、レート1500の相手に九連敗して最後に一勝した場合の最終レートが1400で、レート1500の相手に九連勝して最後に一敗した場合の最終レートが1600となる。

　また、最終レートが1350以下になる可能性と1650以上になる確率は、じゃんけんの勝率を五十パーセントとした場合等しい。

　死ぬ可能性も、100万円を得る可能性も、高くはないものの――対戦相手のレート、そして十敗する可能性まで考慮すれば、死というのはリスクとして大きすぎた。

　死というあまりにも大きすぎるリスクと、100万円というリターンは、釣り合っていない。

　それはまさしく、デスゲームだ。