自分の「いいね!」を信じていたいから。


 この評論はこう読み替えることが出来るかもしれない。

〜昨今、適切な評価がされなくなった本当の理由とそんな世界の未来に向けて私達にできる事〜


 営業、工作による☆稼ぎ、コピペパロディテンプレの氾濫、そして文章生成AIの台頭。

 この評論は、その良し悪しを問うているのではなかった。

 俺の、私の、必死に長い時間かけて熱意を込めて書いた作品が、大量生産された名作に埋もれることが問題だったのか?

 いや、そうでもない。

 問題は他者の「いいね!」が急速に当てにならなくなっていることだと感じられた。

 今まで、みんなが「いいね!」と共有したものは、自信を持って「良し」と判断してきた(その逆も然り)。作者もそれを基準にして活動してきた。これは私達の根幹にある判断システムだろう。

 その根幹がぐらついている。洒落にならないくらい。

 本作ではラノベに的を絞って説明されているが、この問題は小説投稿サイトだけの話ではない。
 Amazon、YouTube、インスタ、食べログ、ヤフコメ。定量化された評価システムを持っているなら、そのすべてが影響を受ける。
 いずれは会社の人事評価ですらその中に含まれるだろう。他者の「いいね!」をもとに算出されるのだから。

 宣伝、実績、名誉、価値。それらすべてが大きな見直しを迫られている。



 茨木のり子は「自分の感受性くらい自分で守ればかものよ」と詠った。
 私達は遅かれ早かれ、先行き不透明な、あるいは無味乾燥な評価の時代に否応なしに入っていくだろう。
 混沌に楽しさを見出だせるなら良い。マイペースを貫けるのならそれでも良い。だが、大きな流れの前に不安を抱くのが自然だろう。
 だから、この作品はいたずらに闇の深さだけを煽り立てるだけでなく、一筋の光明をも示している。
 質(評価対象のみならず、「いいね!」自体の質も含む)を具現化するための、量に淘汰されないための方法が提示されている。
 読んだ限りではまごころを、こだわりを、温もりを重んじる案だと感じられた。

 遠大な方法かもしれない。でもやらないことには完全なゼロであり、作者自らが手を挙げて真っ先に進んでいる。その姿に感銘を受けて当レビューを書いた。

 最後まで自分の「いいね!」を信じていられるような場にいられることを、心より願う。

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