業火の後にのこるものについて
- ★★★ Excellent!!!
『間もなく蓋が閉じられ、父は業火にて燃え上がる。焼きあがって骨だけになったころ、すでに私の中で親父に対する蟠りもまた灰も同然であった。』
ここが一番好きです。
いつか、沸々と燃える何か、自分の人生を歪め続ける、泥のように張り付いて、拘り続けてしまう「なにか」さえも遺灰のようにあっさり軽くなってしまうのだなと思いました。
亡くなったことでほんとうに自由になった。祝福。けれども憎しみで動いていたならどうなるのだろう、という薄ら怖さもあり、ほんとうにこの文章のように淡々と受け入れていくほかないのだろうなと思います。
幸い、私はまだ身内の死というものをほとんど経験したことはなく、漠然としています。その時が来たらこのエッセイを思い出すだろうなと思いました。
国語の教科書で読むエッセイや模試で問題文として取り上げられるエッセイが、読みものとして好きなだったことを思い出しました。あれをただ単純に読みたかったな、と思います。