理性的な担当者と感情的な両親の対比が素晴らしい作品でした。
普遍的な父母の愛からただ息子の幸せを願う心で視野狭窄に陥っていた二人に担当者が一つ一つ丁寧に説明することで、我々読者に対しても違和感なく彼の主張が頭に入りやすくなっています。
サイエンス要素が前面に押し出されていますが、難しくはありません。
人は自分の目に見えるものを、主観的な視点で判断してしまいます。
それが表題の「悪魔」にも繋がりますし、父母と担当者の意見のすれ違いでもありました。
しかし、互いに理解を示せたとき、妥協点を見つけることができます。
取引は止められなくても、出来ることがあります。
広い視野で世界を見つめる息子に対して、出来ることがあります。
最終的に両親が至った結論を、一人でも多くの人に知ってほしいと思いました。
SFと伝承の組み合わせ、というキャッチコピーの通りのお話でした。
参考文献をのぞけばたった一話の短編でしたが、大変読み応えがあります。
かなりサイエンス・フィクションの「サイエンス」要素が強く、会話劇になっているのですが、それがまた、かすかに幻想的な雰囲気になっていると思います。
小さなプラネタリウムの中に、誰もいない小さな水族館の中にいるような心地になれます。
あいにく当方にやサイエンス系列の知識があまりなく、作り込まれている、という感覚でしか判断できませんが、
クリストファー・ノーランの傑作『インターステラー』を見た時のような感動が指にきます。
大変素敵な作品を読めて非常に光栄です!
今後も応援しております。