第344話 最初の壁
3組に別れ、部屋を探索していったレイヴァー。
だが、これといって大きな情報を得られてはいなかった。
あらかた探索を終えた6人は、再び集まっていた。
「何か見つかったか?」
「いいえ、特に何もなしです。1階には研究室のような重要な施設がありましたが、2階には特に何もないように思えますね。」
「じゃあ、ここから先に進むか。アーシェ、中を案内してもらってもいいか?」
「分かったわ、敵も警戒があまり出来ていないこのタイミングなら、自由に動き回れそうね。魔王の間を目指しましょう。」
レイヴァーは、2階の広い通路へと進み、先に歩き出す。
周りには高級そうな絵や、彫刻品、食器、などの白の華やかさを彩るアイテムがたくさん存在していた。
「これ、全部ハデスが集めたのかな?」
「まあ、ハデスの城だからな。誰かに金を譲るようなやつに見えないし、趣味で集めてたんじゃないか?」
「でも、ハデスがそんなことに興味があるとは、私は思えんな。だって、世界を壊してしまっては、自分が好みな作品を作るその人まで死なせることになるのだから。」
「そう言われるとそうですね、だとしたらこれらはなぜ集められてるのでしょうか。技術がなくては、作品はできあがらないのに……。」
疑問を抱きつつ先に進むと、
「っ!?急な魔力の上昇、何か来るわよ!」
「魔力が感じられない私でもわかる、すごい殺気だ。確実に、こっちに迫っているな。」
「全員構えろ!この感じ、オーガと似た何かだぞ!」
広い通路の先に、一つの大きな姿が見える。
ドスンッ!ドスンッ!
その一歩一歩が、地響きを起こし辺りの装飾物が揺れている。
姿がだんだんと鮮明に見えてくる。
「ねえ、あの体ってもしかして。」
「やはり、オーガのようだね、けど今までの個体とは明らかに違う。オーラといい、滲み出ている魔力といい、これまでとは別格だ。」
「考えたくねえけど、あのオーガって。」
「この前戦ったオーガがさらに融合させられてしまった可能性があるわね。」
ドスンッ!ドスンッ!
さらに地響きが大きくなる。
そして、10mはあるであろう巨体を揺らし、両手に鉤爪を装備し大きな声をあげる。
「お前らが、侵入者か!!」
ドゴーンッ!
雄叫びが、レイヴァーを襲う。
「くっ、なんて声のデカさだよ、少しでも気を緩めたら意識が持っていかれそうだ。」
「みんな気をつけて、これまでのオーガよりも明らかに強い、しかもこの禍々しさは。」
「あの体は魔力で満たされている……というより、魔力によって動かされてるというのが正しいかもね。」
「どういいことだ?」
「魔力が体の許容範囲を超えた場合、普通の人なら爆発して死んでしまうわ。けれど、あのオーガはその魔力を爆発手前で抑えてギリギリ器としての役割を果たしているわ。」
あまりの迫力に、レイヴァーも恐怖を感じる。
「主人の命令、お前達、殺す。」
「待って!あなた達は、将軍達なのでしょ!だったら、なんでこんなことをする必要があるの!ハデスは、あなた達を利用しているだけなのよ!」
「主人を愚弄するのか、下等な魔族!我が主人は偉大、あの方がいるからこの世界は回る!」
「本当にそうか?お前は、お前という個人で生きることをハデスに取り上げられたんだぞ!それなのに、なんで従おうなんて思うんだ!」
ガゴーンッ!
その大きな拳で、壁を突き破る。
「我を幸せにしてくれるのは、ハデス様だけだ。だからお前達のような邪魔者は、我が排除しなければならない。」
「ハデスのそばにいて、君は本当に幸せなのかい?その顔は、そのオーラは、苦しんでいるようにしか僕は見えないけど。」
「それは貴様の目が悪いのだ、我はこれほど幸福なことはないほどに満足しているぞ。」
「嘘つかないでよ!あなたは、今とても生き辛いって顔をしてる、サリアには、助けを呼んでいるようにしか見えないよ!」
お互いの意思がぶつかり合う。
「ふざけたことを言うな!我は我だ、この生き方は、我の人生は、この世界を新しくするために必要な大きな力なのだ!お前達は、ここで死んでしまえ!」
「くそっ、聞く耳を持たないな。クロ、どうする。」
クロウは少し考えた後に、
「やるぞみんな、この世界の光は俺たちだけが必要としているんじゃない、今のアトランティスで生きている人たち皆に必要なものだ。それを、独り占めさせてたまるかよ!」
「いいやる気だ、さっきとは風格が変わった。」
「いいのか、お前はここで死ぬかもしれないんだぞ。」
「ハデス様のために戦い、この身が朽ちるまでが我の人生!この力、とくと味わえ!」
初めの壁、オーガが立ちはだかった。
次の更新予定
2024年11月27日 17:03
追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件 スズキチ @suzu34
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