第343話 施設
部屋を出たレイヴァーは、2階へと進む。
城の2階も部屋が多くあり、1つ1つ確認していく必要があった。
なぜなら、
「なぁ、アーシェかサリアならハデス達の魔力を感じ取れたりしないのか?」
「ここが一般的な地形だったらそれができたでしょうね。けど、この建物は特殊な魔法で覆われているの。だから、その魔力が探知の邪魔をして詳しく位置を探し当てられないのが現状だわ。」
「それだけ相手も警戒しているのだな、私たちの事を。」
「彼らにとって、僕らは最大の邪魔者でしかないだろうからね、どうにか見つけ出さないと。」
「かといって、いつ出てきてもおかしくない。クロ、提案なんだが別れて行動しよう。クロとアー、サリとノエ、リィンと私で効率よく探さないと、時間が足りない。」
「OK、そうしよう。」
レイヴァーは、2人ずつに分かれて部屋を探索していく。
1つ1つの部屋には特に違和感がなく、敵の気配もなかった。
そこで、クロウは疑問に思う。
「なぁ、アーシェ、仲間の魔族を犠牲にしてまで魔力を集めて、何をするつもりだと思う?」
「あまり考えたくないけど、まぁこの世界をまっさらの状態にでもするんじゃないかしら、あれだけの魔力を凝縮して一気に放出したらスパルタだけじゃない、アトランティス全体に爆発のような衝撃波が生まれるわ。」
「そうすることで、今生きてる次の世界にふさわしくない生き物を掃討する。そして、白き世界の始まり始まりってか、笑えねえな。」
「そうね、だからこそ私たちがここにいる。やらなくちゃいけないことは、分かりきっているわ。」
「世界を壊させないのもそうだけど、アーシェの両親だって俺は必ず助け出すぜ。」
クロウは自信満々に誓う。
「それは、とても嬉しい言葉ね。けど、難しいことには変わりないーー。」
「だからなんだ。難しいことなんて、今まで何度も乗り越えてる、今更そんな子tで怯んだりしねえよ。」
「そうじゃないわ、世界を守るために私たちは今動いている。だから、世界を犠牲にしてまで両親を助けるのはさすがにわがままかなって思うの。」
クロウは作業の手を止め、アーシェの方に振り返る。
「大切な家族の話しだろ、わがまま言って何が悪い?」
「悪いというか、そもそも世界と天秤にかけたら優先すべきはーー。」
「そんなの、両親に決まってるだろ。」
クロウは何1つ疑問のない声で答える。
その反応に、アーシェも驚きを隠せない。
「あ、当たり前のようにいうのね、この世界を私たちは託されているのよ?」
「まぁ、そうだな。だからって、大切な家族を失ってまでこの世界を守ろうなんて俺は思えない。もちろん、白き世界が作られていいってわけじゃない、けど、1番守りたいと思っているものを守れない奴が、世界なんて守れるか?俺はそうは思わない。」
「……じゃあ、もし選択を迫られたら?どちらかを選ばなくちゃいけない場面が来たら、あなたはどうするの?」
「俺は、アーシェと似て欲張りなんだ。3番目の選択肢、両方とも守るってのが俺の答えだ。何かおかしいか?」
「おかしくはないけど、選ばなくちゃいけない可能性だってあるのよ。」
スッ。
クロウはアーシェの手を優しく握る。
「それじゃあ、両方守れる力を俺が発揮してやる。言っておくけど、俺の全力はまだ誰にも見せてないからよ、俺の限界を勝手に決めるなよ?」
「何をするつもりなの。」
「なぁに、俺がやれることを最大限やるだけだよ。もちろん、死ぬつもりはない、言っただろ、アーシェが望むなら俺1人で世界を壊せるくらい強くなってやるって。今だけでもいい、俺のわがままに少し付き合ってくれ。」
「……。」
アーシェは少し悩んでいた。
クロウなら無理をしかねないと。
自分の両親を助けるために、その身に無理をさせてでも助けるのではないかと。
もちろん、その気持ちはとても嬉しい。
だが、クロウが傷つくことはアーシェとしてはとても辛い。
だからこそ、アーシェは無理を承知でクロウに頼んだ。
「分かったわ、私の家族を助けるために、世界を守るために戦ってくれるのはとても嬉しい。だけど、1点だけ追加で依頼するわ。」
「追加の依頼?」
「ええ。……私の事を悲しませないこと、私が少しでも辛いと感じたらあなたを止めるわ。その為に、パートナーは存在しているのだから。」
「はははっ、かなりの難題だな。けど、難しいことの方が俺はやる気が出るからな。アーシェの事は悲しませない、そして全てを解決して見せる。見に行こうぜ、俺たちの作る道の先にどんな世界が出来るのか。」
「そうね、そのためにここまで準備してきたのだから。背中は任せるわよ、パートナー。」
2人は部屋を後にし、周りを調べ始めた。
そして、1つの気配が迫っていた。
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