第342話 入城

レイヴァーはとうとう魔王の城に入ることに成功した。


中に入ると、広間にまずは出る。


大きい空間なのは間違いないが、周りにはハデスやエレボスを含める魔王10将軍の像が建てられている。


「アーシェ、この像ってまさか。」

「そうね、魔王10将軍の銅像よ。初めに出会ったシャープ将軍から、魔王のハデスまで全員あるわよ。……まあ、今どこまでの人が生きているのかは疑問だけど。」

「ハデスは、自分の仲間の家族にまで手をかけるようなクズだからな、私たちの前にオーガが2体出てきたことも踏まえると、もしかしたら彼らも……。」

「だとしたら、回収したことも納得いきますね。あたし達に何がなんでも倒させるわけにいかなかった、だから魔法を使って連れ戻した。」


レイヴァーは城の中を探索していく。


辺りにはドアが多く、天井の高さからも城の大きさを改めて痛感する。



「ここに、ハデスとハーデンがいるってことだよな。」

「そのはずだね、サリア達の最後の戦いは、このになる。」

「そして、あと1時間もかからずにアーシェリーゼの両親の処刑が執行される時間になる。早く探して助け出さないと。」


レイヴァーは散会して城の中を捜索する。



そして、1つの部屋に疑問を抱く。


そう、リィンが向かった先には見た目では他の扉と変わらないが、魔力で鍵がかけられている部屋であった。


「皆さん!この扉見てください!」

「リィンちゃん、どうしたの?」


全員がその扉の前に集まる。


「この扉、他の扉と違って魔力で鍵をかけてあるんです。この先には、誰も入れさせたくないようです。」

「鍵の魔法、だとしたら開けるための魔法もあるのか?」

「あるよ!だけど、一般的には金庫と同じで魔法をかけた人がパスワードみたいな形で他人には開けられないようになってるんだよ。」

「なら、物理的に壊すしかないか?」

「いいえ、その必要はないわ。」


スタッ。

アーシェは扉の前に立ち、


「ふーっ、この鍵なら私の力で解除できるわ。」

「どんな荒技でぶっ壊すんだ?」

「あなた、私のこと怒らせたいの?先にウェルダンにしてもいいのよ?」

「ごめんなさい。」


(クロくんは絶対に尻にしかれるタイプだよね。)

(パワーバランスの違いが、結婚する前から露わになっているね、クロウガルト大変そうだ。)


スーッ。

アーシェは扉のノブに手を伸ばし、


「開きなさい、私の傍において。」


シューッ。

パキーンッ!

扉の前で何かが弾き飛ぶ音が響く。



そして、


キィー。

扉が優しく開かれる。


「アーシェ、何をしたんだ?」

「簡単なことよ、魔法で鍵をかけているなら、その上からさらに上級の鍵魔法をかけることで元の鍵魔法を上書きする。そうすれば、権限は私に譲渡される。」

「当たり前のように話すが、そんなに簡単なのことなのか?サリ。」

「いや、アーちゃんが規格外だよ!魔法の上から魔法を重ねるなんて、普通は脳内で完結できなくてむしろ本人の方がおかしくなっちゃうよ!」

「だってよ、規格外魔族さん。」


スタッ、スタッ。

アーシェは扉を通り抜ける。


「次期魔王の座を狙うのが私よ、これくらいなんでもないわ。」

「アーシェリーゼはすごいね、僕たちも行こうか。」


クロウ達も中に入ると、



「真っ暗ね、灯りがどこかにあると思うのだけど。」

「探すの大変ですから、あたしの魔法を代わりに使ってください。照明フラッシュ!」


ピカーンッ!

天井に放たれた光が、部屋全体を明るく照らす。



そこにあったものは、


「これって、前にも見たことあるよな。」

「ええ、そうね。でも、ここが本当の最重要施設、ゴーレムやオーガを作り出す研究室ね。」


周りには、見たことのない機械が魔力を用いて動いていた。



何かを混ぜている機械、それを数値で評価する機械、その素体となっているであろうモンスターや人の情報。


そして、



「これって、エリュシオンで戦った魔族だよな。」

「そうだね、僕らが戦ったオーガにさせられてしまった、アーク。やはり、実験台にされていたんだ。」

「じゃあ、さっき出てきたオーガ2体も……。」

「あの強さからして、あたし達がまだ出会っていない将軍さん達が利用されていると考えた方がいいでしょう。」

「くそっ、考えただけで反吐が出るぜ。」


さらに奥に進むと、



「このガラスの箱はなんだ?」


クロウが透明なガラスで作られた箱を指差す。


「っ!?それよ!それが、魔力の供給元!」

「えっ!?てことは、さっきの光で吸収された魔力がこれってことか!?」

「間違いないわ、私の魔力もこの中に少し混ざっている。この魔力は、ついさっきここに作り出されたものよ。」

「この魔力を使って、新たな生物を作り出しているというのだな。……いろんなことを経験した私でさえも、怒りという感情が爆発しそうだ。」

「ここは、まだあたし達でどうにかできるレベルじゃありませんね。まずは、ハデス達及びアーシェさんのご両親を見つけましょう。」



レイヴァーは部屋を後にし、城の2階へ上がっていった。

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